言うなれば、『昭和のミース』。
大抵の建築は住むほどにマズくなる悲しさがあるものだが、
上小沢邸は、歳月をかけ住まい手によって建築が研ぎ澄まされていき、
ついには建築家の創造を超えてしまった稀な例。
驚くのは、家に『モノ』がほとんどないこと。
使わないものは持たない。
着るものは1枚買ったら1枚捨てる。
たとえ鉛筆一本でも、吟味に吟味を重ね本当に良いものをひとつだけ買う。
『陸の無人島』に好んで暮らしているようなライフスタイル。
また、住み手はドイツ文学の研究者だというのに、家のどこにも本棚はなく、
机にわずか数冊の辞書があるのみ。
「駄本を並べたってしょうがないでしょ。それよりこの素晴らしい空間を味わう最高の環境を作りたい」
・・・もう、生活そのものが研ぎ澄まされている。
こういう住まい方はクライアントの鏡。
建築家からしてみれば、「ホント、上小沢さんを見習ってほしい、ツメの垢でも・・・」
と思うものだが、間違ってはいけない。
クライアント以前に、建築がズバ抜けてイイのである。
こういうクライアントに出会うために、ここまで建築に惚れ込んでもらえるために、
結局必要なのは、まず良い建築を作っていること。
クライアントの人生を変えちゃうような、
「この建築さえあれば私の人生にはもう何もいらない」という格の建築をコツコツつくっていれば、
いつかこんなクライアントとも出会えるのでしょう。
・・・・・・とはいえ、僕自身は「捨てない豊かさ」の方も認めているので、ちっと複雑な心境です。
http://forum.inax.co.jp/renovation/archives/030kamikozawa/030-summary.html
このコラムの執筆専門家
- 須永 豪
- (長野県 / 建築家)
- 須永豪・サバイバルデザイン
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森や山と人、地球が健全に回っていく様子を見届けたい。 木を街に届け人の営みに森をもたらし木が、森が、地球が、生命が、人が、そして星々や宇宙までもが響あいはじめるそんな木の建築空間宇宙の意図が起動する響きあう木の空間をつくろう
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