新卒採用、募集時の法的規制 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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新卒採用、募集時の法的規制

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新卒採用の留意点

1、募集時の法的規制
(1)職業安定法
(労働条件等の明示)
第5条の3  公共職業安定所及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者(第39条に規定する募集受託者をいう。)並びに労働者供給事業者(次条において「公共職業安定所等」という。)は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
○2  求人者は求人の申込みに当たり公共職業安定所又は職業紹介事業者に対し、労働者供給を受けようとする者はあらかじめ労働者供給事業者に対し、それぞれ、求職者又は供給される労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
○3  前二項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない。

明示すべき労働条件(職業安定法施行規則第4条の2)
・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
・労働契約の期間に関する事項
・就業の場所に関する事項
・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項
・賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則 第8条 各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項
・健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項

(募集内容の的確な表示)
職業安定法第42条  新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法により労働者の募集を行う者は、労働者の適切な職業選択に資するため、第5条の3第1項の規定により当該募集に係る従事すべき業務の内容等を明示するに当たっては、当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない。

なお、実際に予定されていた賃金額よりも高い金額の賃金で待遇されるかのごとき誤解を労働者に入社前に与えたとして、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料100万円)を認めた裁判例がある(東京高判平成12・4・19日新火災海上保険事件)。

(2)均等法

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
(性別を理由とする差別の禁止)
第5条  事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
第6条  事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一  労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二  住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの
三  労働者の職種及び雇用形態の変更
四  退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
(性別以外の事由を要件とする措置)
第7条  事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であって労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則
(実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置)
第2条  均等法第7条 の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一  労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
二  労働者の募集又は採用に関する措置(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行う場合において、当該複数のコースのうち当該事業主の事業の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコースについて行うものに限る。)であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
三  労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの


(3)雇用対策法

(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
雇用対策法第10条  事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

雇用対策法施行規則
(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
第1条の3  法第10条 の厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げるとき以外のときとする。
一  事業主が、その雇用する労働者の定年(以下「定年」という。)の定めをしている場合において当該定年の年齢を下回ることを条件として労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)。
二  事業主が、労働基準法その他の法令の規定により特定の年齢の範囲に属する労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について当該年齢の範囲に属する労働者以外の労働者の募集及び採用を行うとき。
三  事業主の募集及び採用における年齢による制限を必要最小限のものとする観点から見て合理的な制限である場合として次のいずれかに該当するとき。
イ 長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的として、青少年その他特定の年齢を下回る労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限り、かつ、当該労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合であって学校(小学校及び幼稚園を除く。)、専修学校、職業能力開発促進法第15条の6第1項 各号に掲げる施設又は同法第27条第1項 に規定する職業能力開発総合大学校を新たに卒業しようとする者として又は当該者と同等の処遇で募集及び採用を行うときに限る。)。
ロ 当該事業主が雇用する特定の年齢の範囲に属する特定の職種の労働者(以下この項において「特定労働者」という。)の数が相当程度少ないものとして厚生労働大臣が定める条件に適合する場合において、当該職種の業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の継承を図ることを目的として、特定労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)。
ハ 芸術・芸能の分野における表現の真実性等を確保するために特定の年齢の範囲に属する労働者の募集及び採用を行うとき。
ニ 高年齢者の雇用の促進を目的として、特定の年齢以上の高年齢者(60歳以上の者に限る。)である労働者の募集及び採用を行うとき、又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進するため、当該特定の年齢の範囲に属する労働者の募集及び採用を行うとき(当該特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用の促進に係る国の施策を活用しようとする場合に限る。)。
2  事業主は、雇用対策法第10条 に基づいて行う労働者の募集及び採用に当たっては、事業主が当該募集及び採用に係る職務に適合する労働者を雇い入れ、かつ、労働者がその年齢にかかわりなく、その有する能力を有効に発揮することができる職業を選択することを容易にするため、当該募集及び採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする。

2 応募者の個人情報

雇入れ時の健康診断(労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則43条。なお、特別な業務については労働安全衛生規則45条の2以下)を採用にあたって考慮してよいかについて、行政はおおむね否定的に取り扱っているが、一部の例外を除いて、正式にこれを禁止した通達等はない。

労働安全衛生法
(健康診断)
第66条1項  事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
労働安全衛生規則
(雇入時の健康診断)
労働安全衛生規則第43条  事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
一  既往歴及び業務歴の調査
二  自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三  身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
四  胸部エックス線検査
五  血圧の測定
六  貧血検査
七  肝機能検査
八  血中脂質検査
九  血糖検査
十  尿中の糖・蛋白の有無の検査(次条第1項第十号において「尿検査」という。)
十一  心電図検査
(定期健康診断) 労働安全衛生規則 第44条  事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければならない。
(満15歳以下の者の健康診断の特例)第44条の2
(海外派遣労働者の健康診断) 第45条の2
(給食従業員の検便)第47条
(歯科医師による健康診断)第48条

求人の応募者の健康に関する個人情報を収集・取得したり、採用にあたって考慮してよいかについては、応募者の同意を得た上で、応募者が、当該職種、労働者が従事する予定の具体的な業務の内容(労務の提供の内容)に応じて、当該労務の提供をなしうる身体条件などの健康に関する個人情報を取得し、かつ、採用にあたって考慮することは許されると解される。
ただし、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うにあたっての留意事項について」(平成16年10月29日基発第102907号)第3.4.(4)では、「HIV感染症やB型肝炎等の職場において感染したり、蔓延したりする可能性が低い感染症に関する情報や、色覚検査等の遺伝情報については、職業上の特別な必要性がある場合を除き、事業者等は、労働者から取得すべきではない」とされている。

応募者が知らないうちに、事業主がHIVやB型肝炎などの血液抗体検査を行い、不法行為に基づく損害賠償請求が認められた裁判例がある(東京地判平成15・5・28東京都事件、東京地判平成15・6・20、B公庫事件)。

この点、職業安定法との関係が問題となる。
(求職者等の個人情報の取扱い)
職業安定法第5条の4第1項  公共職業安定所等は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
(秘密を守る義務等として、職業安定法第51条の2)。

これを受けて、「職業紹介者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、事業内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号、一部改正平成16年厚生労働省告示第391号)の第4.1.(1)では、募集の際に収集してはならない個人情報が列挙されているが、応募者個人の過去・現在の健康状態に関する個人情報は禁止されていない。
ただし、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うにあたっての留意事項について」(平成16年10月29日基発第102907号)第3.4.(4)では、「HIV感染症やB型肝炎等の職場において感染したり、蔓延したりする可能性が低い感染症に関する情報や、色覚検査等の遺伝情報については、職業上の特別な必要性がある場合を除き、事業者等は、労働者から取得すべきではない」とされている。


職業安定法
(雇入方法等の指導)
第54条、60条  厚生労働大臣、職業安定主管局長又は都道府県労働局長は、労働者の雇入方法を改善し、及び労働力を事業に定着させることによって生産の能率を向上させることについて、工場事業場等を指導することができる。

職業安定法施行規則
(職業安定法第54条 に関する事項)
第35条  厚生労働大臣は、労働者の雇入方法の改善についての指導を適切かつ有効に実施するため、労働者の雇入れの動向の把握に努めるものとする。
2  学校(小学校及び幼稚園を除く。)、専修学校、職業能力開発促進法第15条の6第1項 各号に掲げる施設又は職業能力開発総合大学校(以下この条において「施設」と総称する。)

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