- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:労働問題・仕事の法律
懲戒処分後に判明した非違行為の懲戒処分の理由への追加は許されない
最高裁平成8・9・26
(山口観光(懲戒解雇)事件)
判例タイムズ922号201頁
『労働判例百選(第8版)』59事件
[判旨]
懲戒処分後に判明した非違行為は、特段の事情がない限り、懲戒理由とされたものではないことから、当該判明していなかった非違行為を懲戒処分の理由へ追加することは許されない。
[解説]
懲戒処分後に判明した非違行為の懲戒処分の理由への追加は許されるかという争点について、争いがある。
裁判例では、
・無条件で追加が許されるとする裁判例はあるが少数説であり、昭和63年代までの比較的古い裁判例である。
裁判例の主流として、
・追加が許される場合として、使用者が非違行為を処分時に認識しており、かつ、その事実が処分理由に包含される場合に限定する裁判例
(処分理由が代表的なものを例示していたり、処分理由どうしが包含関係にあり、あるいは、黙示に表示されていたとみられるような場合であろう。つまり、使用者が認識していても、かつ、全く無関係な処分理由を追加することはできないと解される。)
上記最高裁平成8年判決が「特段の事情がない限り、懲戒理由とされたものではないことから、・・許されない」と判示していることからすれば、おそらく、この説を採用したと考えられる。すなわち、黙示的に懲戒理由と表示されていたり、あるいは、包含関係にあるような「特段の事情がある」場合には、明示的に表示されていなくとも、追加主張の余地があると考えられる。
なお、説明書記載の処分理由と密接に関係のある事実を追加することを認めた最高裁昭和58・12・18労判443号23頁(山口県教育委員会事件)も、同様の最高裁の考えの流れに沿うものであろう。
・追加が許される場合として、使用者が非違行為を処分時に認識しており、かつ、その事実が処分理由に表示された場合に限定する裁判例(処分理由が明示されている場合に限定する説)
・普通解雇について、同様の論点があり、使用者が認識していなかった客観的解雇事由の追加主張が許されるとした昭和の時代の裁判例もあるが、上記懲戒解雇の場合と考えるべきではないかと思われる。
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