- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:労働問題・仕事の法律
・労災(業務上災害)の場合
① 最高裁平成12年3月24日・民集 第54巻3号1155頁
一 大手広告代理店に勤務する労働者甲が長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、甲は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、甲の上司は、甲が業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、甲に対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、甲は、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど判示の事情の下においては、使用者は、民法七一五条に基づき、甲の死亡による損害を賠償する責任を負う。
二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法722条2項の類推適用により右労働者の心因的要因としてしんしゃくすることはできない。
⑤最高裁平成20年3月27日 ・裁判集民事 第227号585頁
業務上の過重負荷と従業員Aの基礎疾患とが共に原因となってAが急性心筋虚血により死亡した場合において,(1)Aは,虚血性心疾患の危険因子となる家族性高コレステロール血症にり患し,冠状動脈の2枝に障害があり,陳旧性心筋梗塞の合併症を有していたこと,(2)使用者は,原審(控訴審)において初めて過失相殺の主張をしたが,第1審の段階ではAが家族性高コレステロール血症にり患していた事実を認識していなかったことがうかがわれることなど判示の事情の下では,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,上記過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断には,違法がある。
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