小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ集中しすぎないバランス
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最近よくテレビに出演されている、早稲田大学の池田清彦先生のお話を聞く機会がありました。
池田先生は生物学がご専門ですが、最近話題になるエネルギー問題に関する著書も多いことから、その日のテーマはエネルギー問題に関するものでした。テレビで拝見するままの気さくな語り口で視点も面白く、いろいろ考えさせられるお話を伺うことができました。
たぶん著書に書かれている内容も多いと思うので、興味があればそちらをお読みいただくとよいと思いますが、私が印象に残ったのは、何でも一辺倒になり過ぎたことに問題があったというような内容のお話でした。
「CO2排出がダメで、代わりは原子力しかないとやってきたところで今回のような事故になったが、それ一辺倒だったためすぐに代わるものがないから、当面はある程度を維持しつつ足りない分は火力に戻すしかないだろう。自然エネルギーも技術や採算性の問題で、有望なものもそうでないものもあるが、例えば風力は風下の生態系に影響したり、風車の騒音問題もあるし、安定した風力が得られるかの設置場所の問題もある。太陽光も日照時間の問題もあるし、日本の狭い国土での設置場所の問題もあるから、普及する中で環境的なデメリットもあるかもしれない。地熱とかバイオマスとか、波力、小水力などもあるが、みんなそれぞれメリットデメリットがあるだろうし、技術の進歩で変わってくることもあるだろう。結局はいろいろ試しながら、それぞれ少しずつ分散型でやっていくしかないのではないか」というような概略でした。
(「CO2がダメだというけれど、化石燃料が無ければ、今頃日本中の山は木が切られてハゲ山かもしれませんよ」などともおっしゃっていました。)
会社経営において、「選択と集中」とおっしゃる経営者は大勢いらっしゃいますが、かつては「多角化」が是として語られる時期がありました。バブル崩壊が契機だと思いますが、GE社のジャック・ウェルチ氏が積極的に「選択と集中」を行って業績を高めたこともあり、少し前までは誰も彼もが「選択と集中」と言っていたような気がします。
「選択と集中」で事業の絞り込みがうまくいって、経営効率の上がった会社も多数あるでしょうが、選択肢を絞るという事はその分逃げ道もなくなるという事で、「選択と集中」を間違って取り返しがつかないことになった会社も、実はそれ以上にたくさんあるのではないかと思います。
うまくいった会社は、自社の状況をしっかり客観視して、やはりある種のバランスを取りながら「根拠がある選択と集中」を行っていったはずで、注力するものを選ぶという事はかなり難易度が高い事だったと感じます。それができるから、優秀な経営者なのかもしれません。
私がコラムを書いていると、バランスという言葉がしょっちゅう出てきてしまうのですが、特に最近、何かの事象を契機にして一方から他方へ、極端に振れ動くことが多いように感じます。そうやって行ったり来たりしながらバランスを取っている側面はあるでしょうが、私はどうしてもバランス感覚が足りないと感じてしまいます。 私の専門分野でいえば、例えば新卒者の就活時の扱い、内定者の扱い、派遣社員の扱いなど、会社の都合でチヤホヤしたり粗末にしたりという事などがありますが、自分の経験上で感じるところでは、やっぱり一辺倒、極端、大きな振れ幅は結果的にあまりうまくいっていないように思います。
適切なバランスを見つけ出すには、いかに自らの状況を客観視できるかにかかっていると思います。
自らを客観視するのは難しいことですが、バランス感覚を養うためには常に意識しなければなりませんし、意識して努力している経営者、管理者の方はたくさんいらっしゃいます。
私たちのような立場の者は、自分のことと合わせて、顧客先の企業が自らの状況を客観視する手助けをするという役目もあります。どこまでできるかわかりませんが、自分のバランス感覚を常に研ぎ澄ます努力をしながら、仕事に向かっていきたいと思っています。
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