小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ意外に熟練が必要と知った身近な仕事
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日頃何げなく利用しているお店やサービスでも、そこで働く立場になったとき、利用している側では気づかなかったことは、結構多いのではないでしょうか。
つい先日、あるクリーニング店に行ったときのことです。私の前に一人のお年寄りがいて、“シルクの毛布”をクリーニングに出そうとしていました。
受付の人は最近入ったばかりらしく、値段がいくらになるのかをいろいろ調べています。どうも普通の毛布とシルクの毛布は値段が違うらしく、シルクの方が当然高いようですが、お客のお年寄りは「いつも使っていて古いものだし、前も普通の値段でやってもらったからその時と同じで良い」と言っています。
お客からの確認を取れば、そういうことはできるようでしたが、別の担当者に問い合わせの電話をしたり、しばらくやり取りをしていました。
たぶん、そんなことまで事細かく書いたマニュアルなどはないでしょうし、考えてみると、どの衣類をどんな請け方をすればよいのかということや、その顧客との過去からの関係など、結構知識と経験がいる仕事です。
他にも、例えば保管してある衣類で、誰からの何がどこにあるというようなことは、お店の人はただ伝票番号だけで管理している訳ではなく、服の色や柄で覚えていて、ベテランの店員さんほど早く確実に探し当ててきます。
クリーニング店の受付のような仕事は、一見すればいかにも機械化できる仕事の代表のように思われますが、レアケースや機械的な判断だけでは対応できないことがたくさんある様子を知り、実は結構熟練が必要な仕事なのだと知り、ちょっと意外な感じでした。
このところ、「10年後に無くなる仕事」といった記事を見かけることがあります。読んでみると確かにそれなりの根拠があって、「確かにそうなんだろう」と思うことも多いですが、このクリーニング店のような例を見ていると、逆に「人間でなければできない仕事」「機械化が難しい仕事」というのは、実は想像以上に多いのかもしれません。
単純作業はどんどん機械化され、人間がやる仕事はなくなっていくでしょうし、ビッグデータやAIなどの技術進歩によって、その流れは強くなっていくのかもしれません。
ただ、その中にも人間でなければできない仕事は残りますし、機械化が進んだおかげで新たに人間がやらなければならない仕事も出てくるでしょう。
そうだとすれば、その時その時で自分ができることを考えて順応していけば、仮に今の自分の仕事が「10年後に無くなる仕事」だったとしても、決して恐れる必要はありません。
過去の歴史を見ていても、技術の進歩や環境の変化によって起こるのは、ただ“失業”することではなく、“役割の変化”です。
今やっている仕事がなくなっていくとしても、それに代わる役割は必ず出てくるはずです。
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