小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「いつの間にか「既得権」から離れられなくなる話」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
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小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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いつの間にか「既得権」から離れられなくなる話

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 私の思い・考え 2020-03-24 08:00

 ある社長のところに、かつて同僚として働いていた後輩が転職の相談に来たそうです。

 年齢は50代後半の人ですが、今いる会社で経営上の問題から組織変更が行われることとなり、その人には関連会社への転籍が打診されたそうです。今までとはまったくの別業種で、仕事内容には経験がなく、加えて勤務地はかなり遠くなり、さらに大きな問題は、給料が年収で100万円以上さがるそうです。

 退職勧奨とも思えるような扱いですが、そんな経緯から旧知の社長に助けを求めたようです。

 

 ただ、この人が一番初めに言ったのは、「これまでの年収が○○万円だったので、最低でも××万円は欲しい」というお金の話だったそうです。

 話を持ち掛けられた社長からすれば、「自分が入社すればこんなことができる」とか、「こんな経験が会社に活かせる」とか、実質的な貢献に関する話が欲しいところですが、そういうことはまったくなく、ただ一方的に自分の都合ばかりを話していました。

 その後いろいろ話をしたものの、結果として入社は断ることにしたそうです。

 

 この社長はとても人情に厚い、どちらかと言えば感情に流されがちなウエットさを持つ人ですが、そんな人が断るのは、よほど納得できないことがあったのでしょう。後から聞いてみると、「自分の市場価値を考えずに一方的な主張ばかりするので、もし受け入れても不満しか持たないと思ったから」ということでした。

 

 これと同じような話は、特に大企業出身のシニア人材が、中小企業に転職しようというようなときに、よく耳にすることです。

 自分は何ができるかという話はそこそこにしたまま、給与や待遇の話に終始して、結果的には折り合いません。大企業では並みの給料でも、同じことを中小企業で実現するのは難しいですし、仕事と給料のバランスが合わないように見えてしまうのです。

 

 ここでの認識ギャップは、結局はその人の市場価値に対するものですが、転職活動でもして複数の会社からのオファーを比較するような経験でもしない限り、これを的確に理解している人は意外に少ないです。

 自分が今まで受けていた処遇は、世間一般のものとして当然であり、それは既得権として前提になっている感じです。ただ、自分の価値を高める努力もせず、たいした結果も出ていなければ、残念ながらそれは無理な相談です。

 

 自分の身の回りにある環境、処遇というのは、それがいつの間にか既得権となり、当たり前の離れられないものになってしまいます。でもその既得権は、自分が望んでいるかどうかにかかわらず、環境が変わればそれに合わせて変わっていきます。

 

 実力が認められたスポーツ選手でさえも、チームを変わったとたんに活躍できなかったり試合に出られなくなったりします。ここには既得権というものは存在しませんが、なぜかビジネスパーソンは既得権があるかのような行動をとりがちです。

 

 しっかりと意識を持っていないと、既得権からいつの間にか離れられなくなってしまうということと、その既得権は環境が変われば存在しえないということは、心に留めておく必要があります。

 

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