小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「安定を目指すより、不安定をどう生きるか」という言葉に思うこと
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新入社員の意識調査、その他若者を対象にした各種の調査では、若者の安定志向の傾向が言われていますが、タレントの明石家さんまさんが、安定志向の20代に関して、ラジオ番組で語った生き方についての自論が話題になっているという記事を見ました。
番組で紹介された川柳、“20代・今後の安定・考える”という作品に対して、
「安定になろうと思っただけで、もう不安定」
「安定を目指そうとするのは無意味」
「不安定をどう生きて行こうかってこと」
「不安定な方が面白い」
と語っていたとのことです。
私は安定志向が悪いとは思いませんし、誰でも「先行きの心配をせずに、平穏に生きたい」と思うことはあるでしょう。
ただ、実際には、どんなに金銭的に裕福な人でも、夢をかなえた人でも、先行きの不安がなくなることはありません。安定していると思えるような状況は、あったとしてもほんの一時のことですし、そもそも未来のことは誰もわかりませんから、先が見通せない不安定な時期の方が、人生の中では圧倒的に多いです。
これは仕事に関しても同じで、例えば、安定していると言われる公務員のような仕事であっても、安定を満喫していることはほとんどなく、何らかの先行き不安を持つ人が大半でしょう。
また、ある分野を極めたカリスマで、誰が見ても安定した地位にいると思える人であっても、本人は“自分は安泰だ”とは思っていないでしょう。
さんまさんが言うように、「圧倒的に多い不安定な時間を、どうやって過ごしていくかの方が重要だ」という考えは、なるほどその通りだと思います。
以前、あるテレビ番組で、日本の起業が増えないことへの議論をしている中で、外部からの感想として、「起業なんていうイチかバチかの行為は、そもそもハードルが高すぎて、しようという気にならない」というものがありました。
私は起業をした側の人間ですが、そこから言わせてもらえば、起業には確かにリスクはありますが、そもそもそんなイチかバチかのバクチのようなことはしません。成功させる見通しを立て、リスクをできるだけ低くする取り組みを、いろいろ考えながら進めていくものです。
私からすれば、会社に属していて、自分の待遇や仕事内容を他人に委ねている状況の方が、逆によほど不安定に思えます。
右肩上がりの時代と違い、最近は先が見通せないことが多いですが、そのことを必要以上に恐れる人が増えているように思います。
不安定を面白いと思えるかどうかは、人によって違いますが、人生が不安定なものだということは、そもそもの前提として考えなければなりません。
これからの時代で「不安定をどう生きるか」は、とても重要なことです。
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