対象:会計・経理
祖父は、昭和50年から第三者所有の土地に借地権を設定して5階建てのビルを建設し、そのビルを祖父が会長(オーナー)である会社へ賃貸しています。(賃貸料収入:年間約5,000万円)
さらに、会社は、このビルをテナントへ賃貸して収入を得ています。(賃貸料収入:年間約10,000万円)
不動産鑑定士による評価額は次のとおりです。
建物:約20,000万円(不動産所得の計算における減価償却残高は、約8,000万円)
土地(更地価格):約90,000万円
借地権:約54,000万円
今回、借地権は祖父に残したまま、ビルのみ会社へ売却しようと考えています。
そこで教えていただきたいのですが、
1そもそも、借地権は建物所有を目的とした土地の賃借ということですが、このように建物だけを売却することは可能でしょうか。
2また、この場合に地主の承諾は必要でしょうか。
3会社側で借地権の認定課税を受けることがあると聞きましたが、これを受けないことは可能でしょうか。
2賃借料の設定はどのようにしたらよいか。
3ビルの売却価格はいくらにしたらよいか。
以上、よろしくお願いします。
補足
2010/05/31 15:19ビルだけ売却するのは、借地権を売却すると莫大な税金がかかるからのようです。
祖父は地主に年間1,000万円の地代を支払っています。
建物の減価償却残高は9,000万円です。
よろしくお願いします。
hebomanさん ( 愛知県 / 男性 / 51歳 )
回答:1件
八ッ波 泰二
経営コンサルタント
7
借地上の建物売却について
経営コンサルタントをしております中小企業診断士の八ッ波(やつなみ)と申します。参考となる見解を述べさせていただきます。
1、【建物のみの譲渡の可否と地主の承諾について】建物の譲渡はできます。但し地主の承諾が必要です。民法612条では「賃借権の譲渡、賃借物の転貸は、賃貸人の承諾を得なければならない。」と規定しています。建物を購入し、使用することは当然に建物がある土地の使用を伴うため、通常の借地権付きで建物を売却することと、建物のみ売却することでも実態は同じと解釈されます。
2、【借地権の認定課税について】借地権を著しく低額で売買した場合、通常の妥当な価格との差額が購入者に贈与されたとみなし、認定課税されます。但し本件は、借地人(祖父)が借地権に基づき借地(権)を転貸(賃借する権利のまた貸し)することになります。 転借人(会社)は借地権の行使に類似(同な?)した権利(使用・収益)と地主への地代支払い義務を負います。(地主は転貸人(祖父)でも転借人(会社)へでも地代を請求できる) この場合、借地人は建物の売却価格に権利金相当を上乗せするか、借地人が借地料を従来通り支払い、権利金を考慮した転貸の借地料(高額な)を転借人(会社)から得ることで、権利金を回収するのが一般的です。また当初の(現行の)賃貸借が権利金なしの契約で更新もない等かなり変則的な場合には、転貸人(祖父)は権利金回収の必要がないため、賃貸のみでも贈与がなく、認定課税はされないと考えられます。
2-2【認定課税されない方策】
上記より、建物売却価格を高額にすることは借地権付き売買と同様で無意味。 転貸の借地代を高額にする(転貸借の契約で、転借人の借地権の処分の制限等を付す)ことで、権利金に対応する負担をある程度している、また借地権なしの賃貸借であることを強調することで、課税を免れるか低額の課税で済むのではと考えます。また新たな転貸借契約の借地料は、現借地契約の存続期間合計で借地権54百万円の4割程度(本来の借地権ではないための減価で、根拠なし)を支払うという考えでは如何でしょうか。
2-3 【ビルの売却価格】不動産鑑定士の評価額は通常の借地権付き建物の評価額であるとすると、同価格と帳簿価格の平均程度を一つの目安としてはいかがでしょうか。
補足
本件はかなり変則的な処理で、認定課税も国税局や税務署の担当者により解釈が異なることもありえます。中堅の不動産会社の顧問税理士にでも相談できればよいのですが。その他としては税務署の電話相談(国税局の相談センターに直結)は、個人名や会社名は名乗らずできます。
なお、地主から転貸の承諾を得る際、承諾料(借地権価格の10%前後)が必要となることが多いです。 明確な回答となりませんでしたが、不明点・疑問点があれば再度ご質問下さい。 スムーズに処理できることをお祈りします。
評価・お礼
hebomanさん
ややこしい質問に丁寧に回答いただき、ありがとうございました。
先生がおっしゃるように、建物を売却すれば、当然借地権もくっついていくのではないか、とも考えますが、税負担を考えるとなんとかならないものかと思っています。
祖父の持っている借地権は、戦前からのもので、帳簿上は3000万円ほどしか計上されていません。借地料も長期間改訂していないようです。
また、会社が借地権を認定課税されないためには、「借地権の無償返還の届出書」を提出すれば大丈夫、というような話も聞きました。
このような手続きをすれば大丈夫でしょうか?
重ね重ね、わかり肉お質問で申し訳ありません。
八ッ波 泰二
私の回答に対し良い評価をしていただき、有難うございます。 また先の回答では「無償返還の届け出」を個人間の取引と勘違いし省略し、失礼しました。
「借地権の無償返還の届け出」は借地権の移動がないことの確認のための届とも言えます。従って、会社は借地権を取得しないため認定課税はありません。
但し、次の問題があります。 先の回答で記述した内容と同様な意味合いですが、権利金がない場合は借地料でその分を回収するのが常識的な取引です。 税務上は「相当の地代」より低額な借地料の場合は、その差額について借主(会社)に受増益(贈与と同様)があるとして認定課税することがあります。
「相当の地代」=土地の更地価格×おおむね6%(年額)としています。但し、全て(常に)この課税がなされるわけではありません。会社は相当の地代より少額な地代を払うことで、決算上その分(受贈益)の利益が多く計上されます。 その利益に対し法人所得税を支払っていますので、相当の地代を支払えば、会社の利益が減り法人所得税も減ります。 受増益と支払い地代とは税務上は相殺される関係と言えます。
このためか、現実の土地の貸借関係が変則的なためか不明ですが、「相当な地代」以下の借地料でも認定課税されないこともかなりある模様です。(税務署の扱いも非常にいい加減ですが)
ご質問のケースでは現在の借地代は更地の6%より高いので、新たに設定する会社との借地料は現在の借地料と同程度(相当の地代と同等かそれ以上)であれば何ら問題はありません。「無償返還の届け出書」を提出されるのが望ましいです。届は現在の借地人(祖父)と転借人(法人)が連名で提出します。
ご参考になれば幸いです。 富士マネジメント(株) 八ッ波
(現在のポイント:-pt)
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