「最近の若者はストレスに弱い」という話を多くの方から聞きます。確かにせっかく就職してもすぐにやめてしまう人も多いし、メンタルダウンに至ってしまう頻度も、昔に比べると増えている感じはします。
でも、本当に若者は弱くなっているのでしょうか。
昔の自分と比べて考えてみると、確かにストレス耐性が弱いと感じることはありますが、ストレス耐性というのは人生経験と成功体験を積む中でできてくるものなので、若いうちに足りないのは当たり前です。
「そもそも態度がデカかった私と比べるのがナンセンスかもしれない・・・」とも思うのですが、そんな図太かった私でも、やっぱり不安なことも嫌なこともどうしたら良いかわからないことも、たくさんありました。
そんな時どうしていたか・・・? 今思えば、意外と適当にやり過ごしたことも多かった気がします。もちろんやるべきことは確実に、上司に怒られないようにやりますが、指示通りのやり方をとらなかったり、優先順位の低いものは自分の判断で後回しにしたり、適度に手を抜いたりということをしていました。
元ソニー上席常務の天外伺朗氏は、著書の中で「やり過ごしの効用」ということをおっしゃっています。かつてのソニーでは「本当に面白いと思うアイデアがあったら、上司に内緒で物を作れ!」という格言があったそうです。上司の指示を部下の一存で「やり過ごし」をする。上司と部下の間で、そのやり過ごしを認め合っていることが、部下の成長と高度な組織マネジメントにつながる。「やり過ごし」ができない部下は無能で、指示を無視されて怒り狂う上司もまた無能、ということでした。
どうも今の若者たちは、このあたりがヘタになっているように思います。指示されたとおりにすべてのことをこなそうとし、手を抜いたり逃げたりしない。実に真面目です。やり過ごすこと自体を許されないこととしているように思います。
一方で、肝心なことを後回しにしたり手を抜く人がいます。何でも順番通りにやって、後から来た大事なことがおろそかになったり、物事の優先順位ではなく自分のキャパをオーバーした時から手を抜いたり・・・。やり過ごす対象や方法を間違っている、ということでしょうか。
最近は少子化で、子供たちはいろんな大人からいろんなことを細かく言われがちになります。今の若者たちも、そんな場面は多かったのではないでしょうか。普通、大人には建前があるので、子供に「適当にサボっていいよ」とは言わないでしょうし、細かく指示した通りにできると「いい子」だと褒めていたはずです。
“言われた通り、マニュアル通りに忠実にやると褒められる”という成功体験ですから、成長してもそこから抜けられず、言われた通りに一生懸命やろうとするのではないでしょうか。
しかし、社会に出れば理不尽なこともたくさんあるし、大事じゃないことや絶対に失敗するやり方を指示する出来の悪い上司も、業績がすべてとばかりに無理難題を言う上司もいます。
そんな状況を自分で判断して、要領よく逃れるすべをしらない若者たちが、一方的に「弱い」と言われているように感じます。“そういうことをきちんと教えてこなかった大人たち” からの批判です。
「最近の若者は弱い」という言い分には、多分に若者への批判的なニュアンスが含まれているように思います。「苦労を知らない」「自分勝手」「すぐに弱音を吐く」「少しでもつらいと我慢できない」などというものです。
でも実は真面目すぎて何でも受け止めてしまう、または言われたとおりのやり方にこだわるマニュアル主義であるなど、「良い意味のやり過ごし」ができないという面もあるのではないでしょうか。そうだとすれば、これは批判的な言い方をしている上の世代に、もともとの原因があるのではないでしょうか。
「今の若者が弱い」のではなく、「昔の若者(私たち世代)はちょっと不真面目」で、「やり過ごし」を今より少しうまくやっていただけなのかもしれません。
「良い意味のやり過ごし」を覚えることで、若者のストレス耐性を少しは高めることができるのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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