見極めが必要な「効率化」と「手抜き」の区別
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少し前に、ある会社の部長から相談されたことです。
自分の部下にあたるマネージャーが、すぐに指示を逸脱して勝手なことをするのだといいます。そのことを本人に指摘すると、決まって「それをやることはムダだと思う」「こちらの方が効率が良い」などと反論してくるそうです。自分の行動は、すべて“仕事の効率化の一環”なのだそうです。
しかし、部長から見ると、指示しているのは会社全体の取り決めとして品質維持のためにやっていることであり、それを勝手に変えるのは職務権限の逸脱で、やらないことはサボり、手抜きであるという認識です。そのマネージャーのせいで、実際に他部門との間でトラブルになったこともあったようです。
この話からすれば、実害があったことからしても、本来は上司に相談したり、確認したりしながら進めるべきことを、自分だけで判断してしまうマネージャーの方に問題がありそうです。また、このマネージャーの勝手な判断を食い止めようとすると、部長はマネージャーの日常業務を常に監視しなければなりません。それこそ非効率な話になってしまいます。
また、食い止める方法も、マネージャーを徹底して指導するか、マネージャーから外して権限を奪うくらいしかありません。相談してきた部長は、なかなか大変な部下を持ってしまったと思います。
それはそれとして、この「効率化」と「手抜き」の区別はどこにあるのかということを、少し考えてみました。
まず思った違いとして、「効率化」はプラスを生み、「手抜き」はマイナスを生むということです。
ただし、ここでいうプラスとマイナスは、その人の立場や視点によって、捉え方が変わる可能性があります。
例えば、仕事量が減れば、少なくともそこで直接働く人の作業負荷は減りますから、結果的にそれが「効率化」であっても「手抜き」であっても、作業負荷の視点だけで見ればプラスに映ります。逆に言えば、その作業負荷の減少が、「効率化」なのか「手抜き」なのかは、その場にいる人たちにはよくわかりません。
「手抜き」にあたる場合というのは、だいたいが「自分たち以外の社内のどこか」に問題が起こったり、しわ寄せが行って負荷が増えたりします。本当の意味での「効率化」になっていれば、他に問題が発生したり、しわ寄せが行ったりすることはありません。
つまり、仕事の「効率化」を考えるとき、もし問題があるとすれば、自分たちが直接かかわらないところで起こるものであり、そこまでの影響を考慮しなければ「効率化」にはならないということです。その影響がわかっていないと、「手抜き」と同じことになってしまいます。
「効率化」のためには、業務全体を見る視野の広さが必要であり、自分で見きれなければ上司や関係先に相談、確認することが必要であり、それをしなければ、本当の意味での「効率化」にはなりません。
この手の話は、実際にも多くの実例があり、典型的なものでは、システム化で書類は減った、業務のアウトソースで人は減った、でも現場でやる作業は増えてしまったなどということが、比較的多くの会社で見られます。
これが会社の全体最適につながっているなら、まだ良いですが、それでもしわ寄せは解消すべきですし、そもそもしわ寄せが起こっているということは、全体最適につながっていないことがほとんどです。
仕事の進め方の変更が「効率化」なのか、それとも「手抜き」なのか、その区別はしっかり見極める必要があります。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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