(続き)・・さてそのように有効性が再認識されたビタミンCですが、具体的にどのような作用を人体にもたらしているのでしょうか。様々ある作用の中で中心的なものは「抗酸化作用」です。体内の物質は電子を奪われることで「酸化」され、種々の悪影響を示しますが、ビタミンCは酸化された物質に電子を与え「還元」するのです。酸化された物質を還元し、酸化を防止することで、病気の予防や治療、体質の改善に寄与しています。
具体的な例を挙げると、我々の体内では常時発生する活性酸素によって脂質が酸化され、動脈硬化やアレルギー、ガンなどの発症を招いていますが、ビタミンCはこの酸化した脂質、すなわち「過酸化脂質」を還元し、元の健全な脂質に戻しています。これによって動脈硬化を予防または軽減し、高血圧や糖尿病、心臓病、脳血管障害、アレルギー疾患、神経変性疾患、さらにはガンなどの病気の治療や予防に役立っているのです。
ビタミンCには抗酸化作用の他にも大切な役割がいくつもありますが、その一つは「コラーゲン形成作用」です。我々の皮膚の張りを維持するためには丈夫なコラーゲンが必要ですが、その形成のためにビタミンCが大切な役割を果たしています。ビタミンCが欠乏するとコラーゲンがうまく作られず、壊血病となって出血などの症状を引き起こします。ビタミンCは健全で若々しい皮膚にも欠かせないものとなっています。
さらに副腎に於けるアドレナリンの産生にも重要な役割を果たします。アドレナリンはストレスや危険な状態から身を守るために不可欠な「抗ストレスホルモン」で、不足すると疲労や痛み、暑さ、寒さ、飢餓、周囲からの攻撃などのストレスに弱くなってしまいます。実際に副腎内のビタミンC濃度は人体で最大となっています。ストレスに負けないためにも、大量のビタミンCが必要なのです。
そのように重要極まりないビタミンCですが、どういう訳か我々人類は、ビタミンCを合成する能力を失ってしまいました。哺乳類でビタミンCを合成できないのは人類とサル、モルモットだけです。ビタミンCはブドウ糖を原料として作られますが、なぜ人類が合成能を失ったかは解明されていません。一つの説として、人類の創世記には果物などの植物が豊富で、ビタミンCの摂取が容易だったことなどが挙げられています。
そのような事情から、人類は太古よりビタミンCを毎日のように摂り続けなければならない、という運命を背負うことになりました。実際にビタミンCの摂取が極めて少なくなると壊血病にかかり、時として生命の危機に晒されます。人類は経験則から、この壊血病を防ぐためにビタミンCの確保に懸命な努力を重ねてきました。すなわち穀物や野菜の栽培、貯蔵法や保存技術、調理法などの開発に励んできたのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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