(続き)・・数ある病気の中で、低体温との関係性が今一番問題となっているのは、他ならぬガンです。ガンには大腸ガン、肺ガン、胃ガン、乳ガン、前立腺ガンなど様々なガンがありますが、わが国ではその多くが増え続けています。しかもその発症年齢が低年齢化し、若い人のガンが急増しているのです。ガンの原因としては食事や汚染物質など様々なものがありますが、低体温がその大きな原因の一つとして注目されています。
実際に、ガンを患った人はほぼ例外なく低体温になっています。ガン患者の場合は長引く入院生活や抗がん剤の使用などによって余計に低体温を招きやすいという事情もありますが、それを差し引いてもガンと低体温との関連性が強いのです。健康だった人でも何らかの原因で低体温となり、それが長年続いた場合、他の要因との兼ね合いにもよりますが、ガンを発症しやすい体質となってしまうのです。
それでは何故、低体温になるとガンをはじめ、様々な病気にかかりやすくなってしまうのでしょうか。先ず指摘しなければならないのが免疫力の低下です。侵入してくる細菌やウイルスから人体を守るために白血球やリンパ球などの免疫細胞が活躍していますが、これらの細胞が最もよく働くのは37~38℃で、35℃台の低体温になると30~50%も働きが鈍くなり、免疫力が著しく低下してしまいます。
実際にガン患者の体を何らかの方法で温めるような治療をすると、ガンが小さくなる、あるいは消失するという事例が各方面から多数報告されています。昔からガン患者がマラリアや細菌感染などで高熱が続いた後、ガンが自然消失したという症例が伝えられていますが、ガンは低体温で発症あるいは増悪しやすくなる一方、高体温には極めて弱く、縮小または消失することが充分にあり得るのです。
低体温が病気を招きやすい第二の理由は、代謝が低下することです。人間が活動する上で必要なエネルギーを得るために、酵素を触媒として様々な化学反応を行なっていますが、その酵素が最も活発に働くのは38℃から40℃とされています。35℃台の低体温の状態では酵素が充分に働かず、化学反応がスムーズに進みません。その結果エネルギーの生成が滞り、また不完全燃焼によって活性酸素が産生されやすくなります。
糖質や脂質の代謝が不活発になると、血糖値や中性脂肪、コレステロールなどの値が高くなり、糖尿病や高脂血症、肥満など生活習慣病の発症を招きます。実際に糖尿病にかかった人の体温は概して低めで、特に網膜や腎臓、神経などに合併症を起こした人ではその傾向が明らかです。また糖尿病の有無に関わらず、脳梗塞や心筋梗塞などの血管病変のある人では、たいへん高い確率で低体温や代謝の低下がみられます・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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