私はレコーディングが好きだ。
何かすばらしいことが起これば、
それが永遠に続く感じがするし、
何も起こらなければ、理想を実現するチャンスが
もう一回うまれるからだ。
~グレン・グールド(カナダのピアニスト)~
(音楽という魔法:音楽之友社刊より引用)
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43年間の歌い手人生で、録音スタジオには何回はいっただろうか。
ある時期、スタジオでのCM録音がメインの仕事だったことがあるから、
純粋な楽曲のレコーディングと合算すると、4000回くらいは、あの金魚鉢
と称するオペレーター室と向き合ってきた事になる。
一切の雑音を排除するわけだから、無機質きまわりない空間。
孤独をヒシヒシと感じる空間。
勿論、コーラスでの録音が多かったから他にもメンバーはいるのだが、
心の奥底には、「もう二度と、この雰囲気を味わいたくない」と思っていた。
それほどの孤独感。いつも胃が痛くなる思いだった。
けれど、さすが、グレングールド!巨匠!!
徹底的にその孤独感を楽しむために、ステージ活動に拒否反応を示すと
同時に、レコーディングスタジオでの推敲を繰り返すことに喜びを感じていた
ようだ。
育ちきっていない我が感性には、観客の応援が必須であるのに比べると、
まさしく雲泥の差。
「何も起こらなければ、理想を実現するためのチャンスが残された」という
前向きの姿勢には驚愕。
巨匠は、弾きながら理想をつぶやき続けた。
こちとらは、からっぽの自分を意識して、観客の心から解き放たれる
感情を心待ちしてステージにたつしかない。
音楽の芸術性を保つには、どちらが正しい姿勢であるかは、あえて言うまでも
ない。
けれど、僕はやっぱりステージに立ち続ける。
僕にとってはそれが「音楽」というものだから。
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