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米国特許法改正規則ガイド
第7回 (第2回)
河野特許事務所 2012年10月4日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(iii)先発明主義の適用か、先願主義の適用か
(a)2013年3月16日より前に提出された出願
新法は2013年3月16日より前に提出された出願には適用されず、旧法が適用される。RCE(再審査請求)の提出は、新出願の提出にはあたらない。
(b) 2013年3月16日以降に提出された出願
少なくとも一つ2013年3月16日以降の有効出願日を有する出願は新法が適用される。これはこのクレームが削除されたとしても適用される。
すなわち、新法は、2013年3月16日以前の有効出願日を有するクレーム発明を含んでいるか、過去のある時点においてクレーム発明を含んでいた特許出願に適用される。当該出願において一つのクレームがかつて2013年3月16日以降の有効出願日を有していた場合でも、新法は明細書における各クレームの特許性を決定するにあたり適用される。これは、たとえ残りのクレーム発明が全て2013年3月16日以前の有効出願日を有し、かつ、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明がキャンセルされた場合にも適用される。
さらに、新102条及び103条は、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明を含むかまたは過去のある時点において含んでいた継続出願、分割出願または一部継続出願に対しても適用される。
これは、たとえ当該出願が、継続出願、分割出願または一部継続出願としてのその言及を削除する補正を行い、また2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明が先の出願でキャンセルされても新法が適用される。
まとめると、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレームが少なくとも一つ存在する場合、当該出願は毒されて全てのクレームについて先願主義が適用され、さらに出願チェーンである継続的出願についても同様に先願主義が適用される。そして、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレームを削除した、または、親出願と子出願との関係を断ち切るべく親出願への言及を削除したとしても先願主義が適用される。
2013年3月16日以降になされた出願で、旧法102条及び103条が適用されるのは以下の場合に限られる。
出願が2013年以降の有効出願日を有するクレーム発明を含んでおらず、また、一度も含んでいなかった場合。
出願が、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレームを含んでいるか、または、過去のある時点において含んでいた出願に対する米国特許法第120条(合衆国における先の出願日の利益)、121条(分割出願)、365条(c)( 合衆国を指定国とする国際出願)に基づく言及を含んでおらず、また一度も含んでいなかった場合。
このように、一度、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレームが出願に導入された場合、または、その継続性チェーンにおける出願に導入された場合、新法102条及び103条は、出願及びそれに続く継続出願、分割出願または一部継続出願に対し適用される。
特に、特許出願は、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明を追加する補正でき、または2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明を含む出願に対する米国特許法第120条(合衆国における先の出願日の利益)、121条(分割出願)、365条(c)( 合衆国を指定国とする国際出願)に基づく特別な言及を追加するよう補正でき、これは当該出願においてもはや旧法ではなく、新102条及び103条に従うことになる。
しかしながら、クレームに対する補正がない、または、米国特許法第120条(合衆国における先の出願日の利益)、121条(分割出願)、365条(c)( 合衆国を指定国とする国際出願)に基づく特別な言及の補正がない、若しくは、その双方である場合、旧法に従うことになる。また新法102条及び103条は新法102条及び103条が適用された特許出願から派生した特許に対し適用される。同様に旧102条及び103条は、旧102条及び103条が適用された特許出願から派生した特許に対し適用される。
(c) AIAに従う出願であるが2013年3月16日以前の有効出願日を有するクレームを含む場合。
たとえ新102条及び103条が特許出願に適用されるとしても、旧102条(g)は以下の場合、出願における全てのクレームに対し適用される。
出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を有するクレーム発明を含むか、過去のある時点において含んでいた場合、または
出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を有するクレーム発明を含むかまたは過去のある時点において含んでいた継続出願、分割出願または一部継続出願としてかつて指定されていた場合
旧102条(g)はまた旧102条(g)が適用される出願から派生した特許に適用される。
このように、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を有するクレーム発明を出願が含むか、または過去のある時点において含んでいた場合、かつ、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明を含むかまたは過去のある時点において含んでいた場合、新法102条及び103条は当該出願に適用されるが、各クレームには、依然として旧102条(g)[1]が特許取得のために要求される。
(iv)2013年3月16日を跨ぐ場合(規則1.55(4))
多くの日本企業はパリ条約に基づく優先権を主張して米国に出願する。すなわち、日本出願時は2013年3月16日より前であり、米国出願時は2013年3月16日以降というケースが今後発生する。
審査官は、日本出願に基づき米国出願した際にどのような内容が追加されたか判断することは困難であるため、以下の要件を課している。
(a) 米国出願時にクレームの追加を行った場合
2013年3月16日以後に行われた非仮出願が、2013年3月16日より前に出願された外国出願の出願日の利益を主張し、かつ、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明に対するクレームを含むか、または、過去のある時点において当該クレームを含んでいた場合、出願人は、その趣旨での陳述書を、当該出願の実際の出願日から4月、規則1.491に規定する国際特許出願の国内移行日から4月、先の外国特許出願日から16月、または、2013年3月16日以降の有効出願日を有するクレーム発明に対する最初のクレームが当該出願にて提示された日のいずれか遅い日以内に提供しなければならない。
この場合は、先願主義が適用される。陳述書にはどのクレームが追加されたかは述べる必要は無い。単に
“upon reasonable belief ,this application contains at least one claim that has an effective filing date on or after March 16, 2013”
の文言を記入した陳述書を提出すればよい。
(b)米国出願時にクレームの追加はないが明細書に補充を行った場合
さらに、2013年3月16日以後に行われた非仮出願が、2013年3月16日より前に出願された外国出願の出願日の利益を主張し、2013年3月16日以後の有効出願日を有するクレーム発明に対するクレームを含まないが、当該外国出願でも開示されていなかった主題を開示している場合、出願人は、その趣旨での陳述書を、当該後の出願の実際の出願日から4月、規則1.491に規定する国際特許出願の国内移行日から4月、または、先の外国特許出願日から16月のいずれか遅い日以内に提供しなければならない。
この場合、クレーム発明の有効出願日は2013年3月16日より前であるため、補正により当該事項をクレームアップしない限り旧法が適用される。同様に何が追加されたか特定する必要は無い。単に陳述書に
“upon reasonable belief, this application contains subject matter not also disclosed in the foreign application”
の文言を入れれば良い。
なお、当該期間は延長されない(規則1.55(f))。
(v) 優先権主張および外国出願の認証謄本提出
米国特許法第111条(a)に基づいてされる原出願においては,優先権主張および外国出願の認証謄本は,その出願の実際の出願日から4月以内,又は先の外国出願の出願日から16月以内の期間の何れか遅い方までに双方提示しなければならない。
また、優先権の主張は出願データシート(規則1.76(b)(6))において提示しなければならない(規則1.55(a)(2))。
また、米国特許法第371条を遵守した後の国際出願から国内段階に移行した出願においては,優先権主張及び外国出願の認証謄本は,PCT及びPCTに基づく規則に定められている期間内に提出しなければならない(規則1.55(a)(3))。
ただし、「外国出願の認証謄本」に関しては日本と米国との間に優先権書類交換協定が結ばれているため、USPTOに取得を求める請求を提出すればよい。具体的な要件は以下のとおり。
規則1.55(d)(1)外国出願の認証謄本に関する本条の要件は,次の場合においては,満たされたものとみなされる。
(i)出願人が別途の書類の形で,特許商標庁が外国出願の謄本を,2国間又は多国間の優先権書類交換協定に特許商標庁と共に参加している外国の知的所有権官庁(参加外国知的所有権官庁(§1.14(h)(1)参照)から取得することを求める請求を提出すること
(ii) 当該外国出願が,出願データシート(§1.76(a)(6)参照)において特定されること,及び
(iii) 外国出願の謄本が(a)に記載されている期間内またはUSPTOの定めるところにより前記期間の後に,特許商標庁によって受領されること。
[1] 旧102条(g):(1) 第135条又は291条に基づいて行われるインターフェアレンスにおいて,それに係る他の発明者が,第104条によって許容される限りにおいて,当該人の発明前に,その発明が当該他の発明者によって行われており,かつ,それが放棄,隠匿若しくは隠蔽されていなかったこと,又は(2) 当該人の発明前に,その発明が合衆国において他の発明者によって行われており,かつ,その発明者が放棄,隠匿若しくは隠蔽していなかったこと,を証明する場合。本項に基づいて発明の優先日を決定するときは,それぞれの発明の着想日及び実施化の日のみならず,その発明を最初に着想し最後に実施することになった者による,前記他人による着想の日前からの合理的精励も考慮されなければならない。
(第3回へ続く)
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