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対象:特許・商標・著作権
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物の製造方法特許の立証責任
~物が新製品でない場合の立証責任はどちらが負うか?~
中国特許判例紹介(37)(第1回)
2014年11月18日
執筆者 河野特許事務所
弁理士 河野 英仁
濰坊恒連漿紙有限公司
再審申請人(一審被告、二審上訴人)
v.
宜賓長毅漿粕有限責任公司
再審被申請人(一審原告、二審被上訴人)
1.概要
特許が物の製造方法に係る場合、当該製造方法により被疑侵害者がその物を製造していることを立証することは困難であるため、被疑侵害者への挙証責任の転換が認められている。専利法第専利法第61条第1項は以下のとおり規定している。
専利法第61条第1項
特許権侵害の紛争が新製品の製造方法に関する発明特許に関わる場合、同一の製品を製造する機関又は組織又は個人は、その製品の製造方法が当該特許方法と異なることを証明しなければならない。
本規定はTRIPS協定34条(1)[1]の要請を受けて特許権者の立証負担を軽減するために設けられたものである。
しかしながら専利法第61条第1項では「新製品の製造方法」と規定されており、同項の適用は、被疑侵害製品が出願時に存在しなかった新たな製品であることが条件とされており、従来から存在する非新製品に対しては適用されない。
本事件では非新製品であるパルプの製造方法に関する特許が付与されており、被疑侵害者に挙証責任があるのか否かが問題となった。最高人民法院は特許権者側が十分証拠収集に努めたこと、被疑侵害者が証拠保全に協力しなかった事などを考慮して、被疑侵害者は挙証責任を果たさなかったとし、被疑侵害者の製造方法は原告特許の技術的範囲に属するとの判断をなした[2]。
2.背景
宜賓長毅漿粕有限責任公司(原告)は木材パルプの製造方法に関する特許を所有している。なお、当該製造方法により製造される木材パルプ自身は従来の木材パルプと同一であり非新製品にあたる。
原告は宜賓長毅漿粕有限責任公司(被告)が製造する木材パルプが特許に係る製造方法を使用しているとして人民法院に差し止め請求訴訟を提起した。
原告は、被告の製造方法を特定するために、被告の生産現場、関連機器設備及び原材料である木板パルプが投入される過程の動画資料を人民法院に提出した。ただし、当該動画は技術的範囲の属否を判断するには十分でなく、これ以上の証拠収集は困難であることから、原告は人民法院に対し、被告工場内の証拠保全を要求した。被告は二度に渡る証拠保全に十分な協力を行わなかった。
原審法院は、被告が挙証責任を果たさなかったとして、被告の製造方法は、原告の製造方法特許の技術的範囲に属すると判断した[3]。被告はこれを不服として再審請求を行った。
3.最高人民法院での争点
争点: 製造された物が非新製品でない場合、挙証責任負担をどのように分担するか
専利法第61条第1項は新製品である場合、被告が挙証責任を負う旨規定しているが、非新製品の場合は何ら規定がなく、また司法解釈中にも関連規定が存在しなかった。本事件ではこのような状況下でどのように挙証責任を分担するのかが問題となった。
⇒第2回に続く
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[1] TRIPS協定第34条 方法の特許の立証責任
(1) 第28条(1)(b)に規定する特許権者の権利の侵害に関する民事上の手続において、特許の対象が物を得るための方法である場合には、司法当局は、被申立人に対し、同一の物を得る方法が特許を受けた方法と異なることを立証することを命じる権限を有する。このため、加盟国は、少なくとも次のいずれかの場合には、特許権者の承諾を得ないで生産された同一の物について、反証のない限り、特許を受けた方法によって得られたものと推定することを定める。
(a) 特許を受けた方法によって得られた物が新規性のあるものである場合
(b) 同一の物が特許を受けた方法によって生産された相当の可能性があり、かつ、特許権者が妥当な努力により実際に使用された方法を確定できなかった場合
[2] 最高人民法院2013年7月17日判決 (2013)民申字第309号
[3] 四川省高級人民法院判決 (2012)川民終字第533号
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