米国特許法改正規則ガイド 第8回 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第8回 (第1回)

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米国特許法改正規則ガイド 

 第8回 (第1回)

発明者の宣誓または宣言と、譲受人による出願(AIAセクション4)

河野特許事務所 2012年10月22日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 2012年8月14日USPTOは宣誓書または宣言書に関する最終規則を発表した。他国と同様に企業が特許出願人となれるようになった。規則改正に伴い、宣誓書または宣言書、出願データシート、PCT願書の形式が大幅に変更されることになる。以下に詳細を説明する。

 

(1)概要

 改正前は原則として発明者が出願人であることが要求されていたが、他国との調和を図るべく、企業等の譲受人が出願人として特許出願することができるようになった(118条)。その他宣誓書の記載様式が変更された。

 

(2)譲受人による出願

(i)企業による出願

 発明者が発明を譲渡する者または発明者が発明を譲渡する義務のある者は、特許出願を行うことができる。

 その他、十分な経済的利害関係を証明する者は,発明者の代わりに及び代理人として、該当する事実の証明に基づき、かつ、出願行為が当事者の権利を確保するために必要であることを立証して、特許出願を行うことができる(118条)。

 

 規則案が公表された当初USPTOは、従来どおり、発明者が出願人であり、企業を出願人とする立場をとっていなかった。USPTOは、発明者が死亡、サインを拒んだ場合等、特殊な状況下のみ譲受人である企業の出願を認めるとしていた。

 しかしながら、このような特殊な取り扱いでは、国際的調和の観点に反し、また米国特許法第118条に関する議会の立法趣旨に反するとの反対意見が大きく、結局他国と同様に、譲受人である企業が出願人となることができるよう最終的に規則が改められた。

 

 規則1.42(b)では、この点を明確にすべく、以下のとおり規定している。

「ある者が規則1.46に基づき特許出願を行った場合、文言“出願人”は、規則1.46に基づき特許出願を行う譲受人、発明者が発明を譲渡する義務のある者、またはそれ以外に事項に関する十分な経済的利害関係を証明する者をいい、発明者ではない。」

 

 このように企業が出願人となれるが出願の特定は、従来と同じく、発明者名を利用する。例えば、オフィスアクションにおいた先行技術はYamada等、発明者名で特定される。

 

 2012年9月16日以降にPCT出願を行う場合は、WIPOが公表[1]しているPCT/RO/101を利用すればよい。参考図1はフォームPCT/RO/101である。ただし、受理官庁を日本国特許庁とする場合、PCT願書のフォーマット及びソフトウェアが未だ対応できていないため、WIPOニュースレター[2]に記載された暫定的な取り扱いとする必要がある。

 

 

参考図1 フォームPCT/RO/101

 

(ii)法人による出願の場合は代理人が必要

 特許出願人は自らの事件を提出し,手続をすることができ,又は委任状を出し,1又は2以上の特許有資格実務家又は共同発明者を代理人とすることができる。ただし、法人(juristic entity)(例えば、組織的な譲受人)は、たとえ当該法人が出願人であったとしても、特許有資格実務者を代理人としなければならない(規則1.31)。

  法人はUSPTOに対する特許出願のプロセキューションを自ら行っているが、あまりにもミスが多く審査官の負担が大きいことから、規則改正により特許有資格実務者による手続を必須としたものである。本規則改正を通じて、USPTOは審査のバックログの低減を図ることとしている。

 

(3)宣誓書または宣言書

(i)宣誓書または宣言書への発明者のサイン

 譲受人が出願人になったとしても当然に出願には発明者の名前を含める必要がある。また、発明者または共同発明者である各人は、出願に関し宣誓書または宣言書にサインしなければならない(115条(a))。

 

(ii)宣誓書または宣言書に必要な説明(115条(b))

 宣誓書または宣言書には以下の説明が必要となる(規則1.63(b))。

 (a)自身の法律上の氏名で宣誓または宣言を行う発明者または共同発明者を特定すること;

 (b) 対象とする出願を特定すること

 出願の特定は、出願日と共に米国出願番号若しくはPCT国際特許出願番号を記入するか、または、「添付された出願である」のボックスにチェックを記入すればよい。

 (c) 宣誓または宣言を行う者が、記載された発明者または共同発明者が、宣誓書または宣言書が提出された出願におけるクレーム発明の原発明者または原共同発明者であること信じているという声明を含むこと

  (d)出願が宣誓または宣言を行った者によりなされたということ、または、宣誓または宣言を行った者によりなされたと認められたということを陳述すること

 

 2012年9月16日以降はUSPTOが公表しているフォーム(PTO/AIA/01)[3]を用いればよい。参考図2はフォーム(PTO/AIA/01)である。複数の発明者が存在する場合、発明者毎にフォームPTO/AIA/01を用いる。

 

 

参考図2 フォームPTO/AIA/01

 

 なお、国籍及び第1発明者である旨の記載は不要となった。また発明者の居所、企業名、優先権等の情報は後述する出願データシート(Application Data Sheet)に記載すれば良く、宣誓書には記載する必要がなくなった。また発明者のサイン日はオプショナルであり、必須ではない。

 

 また宣誓書または宣言書には記載されていないが、以下の点を発明者が認識した上で、宣誓または宣言を行うことが必要である(規則1.63(c))。すなわち、クレームを含む出願の内容をレビューし、理解し、かつ、規則1.56に規定する特許性に関し重要であるとわかっている全ての情報をUSPTOへ開示する義務があることを認識していない限り、その者は出願に関し宣誓または宣言することができない。

 

(iii)提出時期

 通常宣誓書または宣言書は、米国出願時に出願データシート及び明細書等と共に併せて提出することが多い。ただし、出願後においても提出することができる。USPTO審査官は登録できる状態になったと判断し、かつ、宣誓書または宣言書が提出されていないと判断した場合、Notice of allowanceではなく、Notice of Allowabilityを出願人に通知する(規則1.53(f)(3)(ii))。この場合、規則1.16(f)に規定する料金130ドルの支払いが必要である。

 

 出願人は3ヵ月以内に宣誓書または宣言書を提出しなければならない。提出しない場合、出願は放棄される。なお、当該3ヵ月の期間は延長することができない(規則1.136(c))

 

(iv)追加の要件

 長官は、宣誓書または宣言書に記載の発明者及び発明に関する情報を追加するよう指定することができる(115条(c))。



[1] PCTの願書 http://www.wipo.int/export/sites/www/pct/en/forms/Forms_16_September_2012/r09_12_e.pdf

[2] http://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/newslett/2012/7_8_2012.pdf

[3] http://www.uspto.gov/forms/sb0001aia_preview.pdf

 

(第2回へ続く)

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