(続き)・・それでは、各種ビタミンやミネラルなど微量栄養素の欠乏は現代人の食生活に於いて、なぜ発生しやすくなっているのでしょうか。前述のように無理なダイエットをしようとしてカロリー制限をすると、微量栄養素の欠乏を招きやすいことは容易に想像できます。食事の絶対量が大幅に減れば、微量栄養素の摂取量もそれに比例して減少するからです。ところが実際には、食事量の少なくない人に於いても微量栄養素は不足しがちです。
その理由の一つは、現代人特有の「嗜好」が挙げられます。現代人は、昔の人が普通に食べていた玄米や全粒小麦、雑穀、木の実、各種の豆類、イモ類、海藻類などをあまり食べなくなり、その代わりに白米や精製した小麦粉製品、各種の加工食品、インスタント食品などを食べるようになりました。これら「現代的」な食品は、口当たりは良いものの、ビタミンやミネラル、食物繊維などの成分がたいへん少なくなっています。
典型的な現代の日本人の食生活をみてみると、白米のご飯に野菜入り味噌汁、焼き魚、お浸しに豆腐の冷奴などの和食、またはトーストにハム付きの目玉焼き、グリーンサラダ、フルーツ入りのヨーグルトなどの洋食が挙げられます。このような食事を一日に三食も食べていれば、必要な栄養素を充分に摂取することができて、何も問題がないと考えてしまいます。事実、このような食事はかなり健康的な部類に含まれます。
ただ現実には多くの人、特に若い勤労者世代の方々は、多忙や料理への不慣れといった事情から、どうしても各種の加工食品やインスタント食品、ファストフード、外食などに頼りがちです。それと反比例して、新鮮な野菜や果物、海藻類、豆類などの摂取量は少なくなります。その結果、新鮮な自然の食材には豊富に含まれているはずの微量栄養素が、決定的に不足するという事態に陥ってしまいます。
一方で野菜や果物、豆など自然な食材をたっぷり食べ、加工食品などは殆んど摂らないような方も見受けられますが、そのようなマメな方の場合でも栄養バランスの問題と無縁ではありません。何故ならば、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え、ハウス栽培などによって土壌の環境が荒れてしまい、ビタミンなどの栄養素が昔に比べたいへん減少しています。栄養素の種類によっては、50年前の10分の1以下という減少ぶりです。
そのような事情から現代の食卓に於いては、ちょっと油断すると栄養バランスが容易に乱れ、大切な栄養素の不足からその欠乏症に陥りやすい状況となっています。日頃から栄養バランスに気をつけている人でさえも要注意なのですから、どうしても加工食品やインスタント食品などに頼っている人であればなおさらです。そのような食事情の下で、我々はどのように栄養素の欠乏から身を守り、健康を維持していくべきでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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