(続き)・・例えば夜ふとんに入ってもドキドキして眠れない、上半身がカーッとする、などの症状は、交感神経が異常に興奮することにより発生します。反対に、朝の目覚めが悪い、血圧が低く立ちくらみする、などの症状は、副交感神経が異常に興奮することが原因です。そのように交感神経と副交感神経の切り替えが上手くいかないことが自律神経失調症の本態で、各臓器の器質的な病変がなくとも、自律神経の機能異常によって全身各部位に関係する様々な症状が現れるのです。
それでは現代人に自律神経失調症が増えている原因としては、どのようなものがあるのでしょうか。自律神経のバランス、すなわち交感神経と副交感神経の適切なスイッチを阻害している要因が、現代社会の中に潜んでいるはずです。よく挙げられる要因としては「ストレス」と「生活習慣の乱れ」があります。現代社会はストレスに満ち溢れ、生活習慣が乱れやすいことが指摘されていますが、逆にいうと、ストレスとうまく付き合い、生活習慣を改善することで自律神経失調症はかなり克服できるのです。
前述の心身症や仮面うつ病も含めて、ストレス対策はたいへん重要なテーマですが、そもそもストレスとは何でしょうか。ストレスは悪の権化、万病の元のように言われる風潮がありますが、全てのストレスは悪なのでしょうか。また同じ環境にいて同じストレスにさらされているはずの二人が、一方は心身を病んでしまい、もう一方は相変わらず元気、という不思議なことがよくありますが、同じストレスを受けても人によって反応が異なるのは何故なのでしょうか。
我々がよく「ストレス」と呼んでいるものは数多くあります。例えば環境の急激な変化、事故や災害のニュース、親しい人の死、深夜までの残業、上司からの叱責、友人とのトラブルなど、それこそ枚挙に暇がありません。特に現代はIT化の進展や人間関係の希薄化、経済情勢の悪化なども関係し、ストレス要因が明らかに増えています。それにも関わらず、同じ境遇にあるはずの二人の間でストレスによる影響に大きな差が生じるのはよくあることです。
上記のストレスというのは、正確には「ストレス源(ストレッサー)」と呼ばれ、それに対する人間の反応のことを「ストレス反応」と呼んで区別しています。つまり同じストレス源に晒されても、ある人は過剰な反応をしてしまい、深刻なストレス性の障害を起こす一方で、別の人は適当に受け流してケロッとしている、などという個人差が発生するのです。そのような差異はストレスに対する感受性や抵抗力に個人差があるということですが、それはどのような理由によるのでしょうか。
ストレスに弱く、心や体にトラブルを来たしやすい人をよく観察すると、ある共通項があることが分かります。性格的には、依存性が強く、クヨクヨと考えがちで、周囲の目が気になり、細かいことにこだわるような人がストレスに弱い傾向があります。また体質的には、やせ形で虚弱体質、冷え性、アレルギー体質、低血圧傾向の人がそれに該当します。逆にいうと、性格的あるいは体質的な弱点を可能な限り克服することで、ストレスへの耐性を強めることがある程度は可能です・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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