クリニックなどの医療現場や産業医として活動している企業現場で痛切に感じるのは、糖尿病や高血圧、がんなどの生活習慣病、それにうつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調者が急増していることです。また特定の病気がない方でも、慢性的な疲労感や肩凝り、不眠、手足の冷えなどといった様々な不調を感じる人も明らかに増えてきています。病気が全くなく、本当に健康であることを実感している人はひどく少なく、まさに「一億総半病人」ともいえる深刻な状況となっています。
病気にかかった本人は、病院やクリニックなど医療機関の門を叩いて検査や治療に取り組みますが、多くの医療機関では治療の手段として、薬や手術などの「西洋医学」的な手法を用います。このような西洋医学は、目に見える症状や腫瘍、病原体などを取り除くのには威力を発揮しますが、慢性の生活習慣病やストレス性疾患、メンタルヘルス不調などに対しては根本的な解決にはなっていないのが現状です。そのため多くの患者は病状が良くならず、長年にわたり薬を飲み続けています。
薬を使わずに、食生活の改善や運動などで生活習慣病を治そうという取り組みも盛んに行なわれており、セオリーに従って上手に行なえば一定の効果が得られます。ところが現実には、単に食事のカロリー数や栄養バランスを是正し運動に励むだけでは、なかなか思ったように改善しないことが少なくありません。何故かというと、生活習慣の乱れの根底には重大なストレスや環境要因などが横たわっていることが多く、これらを同時に解消しなければならないからです。
様々な社会的および時代的な要因によって生活習慣病やメンタルヘルス不調を発症する人が増え続け、またそれに対する医療機関側の根本的な治療が思うに任せないとなると、これらの諸疾患の累積患者数は、雪だるま式に増え続けることになります。実際に糖尿病などは予備軍まで含めると1400万人もの患者がいると推測され、ガンは今や国民の3人に1人がかかる病気となっています。またうつ病などが原因で自殺する人は10年連続で3万人を超えています。
病気や体調不良の人が急増している結果、国民の医療費はうなぎ上りの状態です。医療機関への受診者が増えているだけでなく、患者一人あたりの医療費単価も増加傾向です。医療費の膨張を抑制するために薬価の引き下げが段階的に行なわれましたが焼け石に水で、国民の薬漬けはむしろ深刻になっています。これに高価な「先端医療」の普及が加わり、国民の生命と健康をあずかる健康保険の財政は、まさにパンク寸前まで悪化してしまいました。
このような国民の不健康な状態を改善し、国や社会全体がもっと健全になるためには、薬や検査などの西洋医療に過度に依存した医療ではなく、もっと人間の自然な営みを尊重した医療や健康法の普及が必要であると考えられます。人間にはもともと「自然治癒力」が備わっており、病気を予防し軽症のうちに治癒させる力があります。この自然治癒力を引き出すような治療法および健康法に取り組むことによって、病気を未然に防ぎ、またより健康になることが出来るのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
あなたの自然治癒力を引き出し心身の健康づくりをサポートします
病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
このコラムに類似したコラム
建物で癒される・・自然治癒力を高める「五感医療」とは?(3) 吉野 真人 - 医師(2011/11/23 07:00)
蒲田よしのクリニック開業1か月・ラドン浴の効能とご感想(1) 吉野 真人 - 医師(2011/12/09 07:00)
蒲田よしのクリニック開業1か月・事前「内覧会」のご報告(2) 吉野 真人 - 医師(2011/12/07 07:00)
蒲田よしのクリニック開業1か月・事前「内覧会」のご報告(1) 吉野 真人 - 医師(2011/12/05 11:00)
建物で癒される・・自然治癒力を高める「五感医療」とは?(5) 吉野 真人 - 医師(2011/11/27 07:00)