(続き)・・初期の小さなガンはそのように手術で完全に取り除くことが可能となりましたが、進行し遠隔転移してしまったガン、あるいは再発してしまったガンに対しては、もはや打つ手はないのでしょうか。現代医学はそれに対しても果敢に取り組んできました。その主力は抗がん剤と放射線治療です。これと上述の手術とを合わせて、ガンの「3大療法」もしくは「通常療法」と呼ばれています。これらは日本の病院に於いては、まず第1に勧められるスタンダードな治療法なのです。
抗がん剤は、ガン治療の様々な局面で活用されています。進行ガンで手術が困難な症例に対して用いられるほか、手術可能な症例であっても、再発防止目的や手術による除去を容易にする目的などで、手術前または手術後に使用するケースも目立ちます。また元々手術の対象とならない悪性リンパ腫や白血病など血液の悪性腫瘍に対しては、抗がん剤による治療が第1選択で、たいへん大きなウェートを占めています。
さてその抗がん剤は、いったいどのような仕組みでガンに効くのでしょうか。実に多数の抗がん剤が出回っていますが、いくつかの薬品群に分けることができます。ごく簡単に説明すると、アルキル化剤はガン細胞のDNA(遺伝子)に損傷を与えて死滅させ、代謝拮抗剤はガン細胞の代謝経路に介入してその機能を阻害し、植物アルカロイドはガンの細胞質内構造に損傷を与えて死滅させる、などそれぞれ異なった機序で抗腫瘍効果を発揮します。
実際のガンに対する薬物治療では異なった薬品群から各々薬物を選択し、組み合わせて投与することが一般的です。例えば悪性リンパ腫に対する最もポピュラーな治療であるCHOP療法は、異なる4つの薬品群から選んだ薬剤の頭文字を並べた呼称です。薬剤を単独投与するよりも、機序の異なる薬剤を複数投与する方がガンに対する効能が高い、という考え方に基づく治療法ですが、反面ではその分だけ副作用も強く出ることは否めません。
抗がん剤の副作用は実に多岐にわたり、しかもたいへん深刻です。上記のガン細胞を殺傷する効能は正常細胞にも形を変えて降り注ぎ、薬剤ごとに特徴のある様々な副作用をもたらします。頻度の高い副作用としては悪心・嘔吐、食欲不振、脱毛、貧血、白血球減少とそれに伴う各種感染症、血小板減少とそれに伴う出血傾向、肝機能障害、腎不全、心筋障害、間質性肺炎、末梢神経障害、中毒性表皮壊死症などと、それこそ枚挙に暇がありません。
深刻な副作用のために命を落とす人も決して珍しくありません。例えば白血病では約10人に1人くらいが副作用を直接の原因として死亡しています。また死亡は免れても、副作用に耐えられず治療を途中で断念してしまう人も後を絶ちません。さらに病気自体は改善したものの、深刻な副作用がそのまま後遺症になってしまい、長年苦しんでいる人も多数おります。そのような副作用も治療が奏功するならば耐えられるというものですが、現状はかなり異なるようです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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