我々の周りには実にたくさんの病気があります。糖尿病や脂質異常症、高血圧、痛風といった生活習慣病はもとより、花粉症、ぜんそく、アトピーなどのアレルギー疾患、うつ病や統合失調症、パニック障害などの精神疾患、骨粗しょう症や慢性関節リウマチ、変形性膝関節症などの筋骨格系の病気、それにパーキンソン病や潰瘍性大腸炎、特発性心筋症などの難病が我々を苦しめています。それだけでなく何千という数多くの病気が存在することが知られています。
そのように数えきれないほど存在する病気の中でも、「ガン」ほど我々が心底から恐れ、何とか自分だけは罹りたくないと願っている病気はないのではないでしょうか。例えば糖尿病や脳卒中、肝硬変などの慢性疾患に罹っている人に聞いた場合でも、「ガンにだけはなりたくない」とか「ガンにならないためにタバコをやめた」とかいった声がよく聞かれます。つまりガンという病気は、肉体的にも精神的にも我々人間が特に恐れ、回避するために多大な努力をしているのです。
それでは我々は、なぜ殊のほかガンを恐れるのでしょうか。それは一つには、ガンがもつ悪いイメージがあります。ガンというといかにも「不治の病」というイメージがあり、一度かかると決して治らない、と考えられているフシがあります。また手術や抗がん剤といった治療のため、たいへん苦しい闘病生活を連想してしまうのです。さらに末期ガンになると激しい痛みで悲惨な最期を遂げる、といった伝えられ方をしており、ガンに対する恐怖心が駆り立てられています。
ガンを何とか回避しようという努力は、世の中の様々な現象を観察してもよく感じられます。病院へ行くと数多くの臨床検査やレントゲン撮影、MRI(核磁気共鳴画像)などが行われていますが、その最大のターゲットは何といっても「ガン」です。実際に内科、外科、泌尿器科など多くの診療科で最も力を入れている分野は、圧倒的に「ガン」です。国立がんセンターをはじめ全国には何軒もの「がんセンター」が存在し、最新のガン診療をめぐり凌ぎを削っています。
保険の市場でもガンは大きなテーマです。1970年代以降、外資系保険会社を中心に様々な「ガン保険」が開発され、次々と販売されていきました。一家の大黒柱を中心に、生命保険に加えてガン保険にも加入する動きが活発です。その背景としては、ガンの罹患率や死亡率が上昇してきたことと、ガンにかかった場合の治療費や家族の養育費などが莫大な金額になりがちなためです。ガンにかかると肉体的負担のみならず、経済的負担もたいへん大きいのです。
日本人のガンの発生率や死亡率は、確実に上昇を続けています。2008年の厚生労働省の「人口動態統計」によると、ガンによる死亡者数は年間約34万人で、男女ともに死因の第1位を占めています。罹患率、死亡率ともに1975年頃から一貫して増加し続けており、主要な疾患の中では最大の伸び率を見せています。今や日本人の3人に1人は「ガン」で亡くなっているという現実があり、国家や国民の最大の課題の一つ、といっても過言ではありません・・(続く)
このコラムの執筆専門家

- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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