- 服部 真和
- 服部行政法務事務所 ギター弾き行政書士
- 京都府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
前回のコラムではIT企業に必要な契約について解説しましたが、もし、IT企業が目に見えない無体物を提供する際、明確な契約を交わしていなかった場面で、後々に問題が発生すれば解決策としてどのような法律的判断基準が考えられるでしょうか。
この場合はまず、「(1)商法の規定に従う」ことになりますが、商法ではIT企業に深く関わる規定は見当たらないので、続いて「(2)IT業界の商慣習に従う」ことになります。これは一般的に、業界によってスタンダードとなるべき価値観が存在すると考えられているからです。しかし、確固とした商慣習が認められない場合は「(3)著作権法、特許法などの諸法令に従う」ことになり、最後に「(4)民法に従う」こととなります。
しかし、これらだけでは当事者の本当の目的を達成することは難しいと思いませんか?なぜならば、現行の法律は日々進歩するIT業界の事情に追いついているとはいえないからです。
このように書きますと「(2)にIT業界の商慣習に従うとあるじゃないか」と言われてしまいそうですが、これはあまりに判断基準が曖昧であり、取引時にそれぞれの認識の違いなどから、余計に問題がこじれる可能性が高いのです(そもそもIT業界はその歴史が短いために商慣習が築かれているとはいえないかもしれません)。解決すら困難となってしまえば、最終的に裁判所にその判断を委ねることにもなってしまうでしょう。
ここで重要なのは現行の私法制度にいわれる「私的自治の原則」というものです。
これは簡単に言ってしまえば、先に触れた法律的な判断基準に対して「契約を交わせば、すべてに優先することができる」というものです。
この原則によれば「個人、法人問わず、それぞれの責任において互いの間に私法上の法律関係を自由に決定し、規律することが可能」とされ、契約を締結することで、問題が発生した場合も素早い解決が可能となります。
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