- 服部 真和
- 服部行政法務事務所 ギター弾き行政書士
- 京都府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
前回のコラムではIT企業が契約を交わさない場合のリスクについて書きましたが、今回から具体的な契約書のポイントについて解説していきます。
まずは、IT関係契約書のお話をする前に、一般的な契約書に共通する契約書作成のポイントを見ていきましょう。そもそも契約は、契約書によらずとも当事者の意思の表示の合致さえあれば、契約は成立すると認識されています。
例えば、あるパソコンを売りましょう(申込み)といい、その申込みに対して買いましょう(承諾)という意思表示があれば契約は成立するので、契約の成立要件は「申込」と「承諾」のみとなります。
つまり、契約自体は当事者双方が契約書に署名捺印等をしてはじめて有効になるというわけではなく、実は口頭のみによっても成立する訳です。
それでは、契約書など作る必要はないのでしょうか?
答えは「NO」です。これについては契約書の役割から考えましょう。
契約書の役割・・・。これはすなわち「トラブルのおきない契約を交わす」ことや「自分達に有利な契約を交わす」ことにも通じるわけですが、一般的に契約書の役割として大切なものには以下のものがあります。
一、当事者双方の合意内容を明示する役割
当たり前のように思えるかもしれませんが、これが一番重要な役割です。契約書の第一番の役割が、当事者が合意した内容を相互が目に見える形で確認できることになります。のちのち、何を合意したかわからないという「言った、言わない」を防ぐために、明確で具体的な記載を行います。これが実現されないと、そもそもの契約としての機能がまったく果たせません。
二、自分達に適したルールを設ける役割
民法や商法などに原則的に定められた契約のルール(任意規定)の内容を取引の際に少しでも自分達の事情に沿うように修正する役割があります。
以前のコラムで述べたように当事者間で合意した契約内容は、民法や商法などの法律で定められているルールよりも優先されます。もちろん、まったくの自由に決められるわけではなく、法律の強行規定に反するような条項を修正することはできませんが、それ以外(任意規定)に関しては当事者の意思によって自由に設定することが可能となります。
これら、任意のルールとして当事者一方が「自分に有利になるように修正した条項」を盛り込めば、通常の契約内容より、いろいろと有利にすることが可能な訳です。
もちろんこれは、取引先との関係性に注意して、相手方が合意に応じる範囲内かつ、最大限に有利となるような条件を考えなければないことを意味します。
三、予見可能な範囲で、紛争を未然に防ぐ役割
予見可能な範囲の揉め事に対し、紛争が発生してから法律家や、裁判所に委ねて処理することは、時間的・費用的な損失を当事者双方に発生させることになります。
そこで、事前に当事者間で双方の解決基準(紛争予防規範)を明確にしておくことで、これらの時間・費用の損失、精神的負担を低減することができます。
四、裁判時の証拠機能
それでも、なお一方の意固地な反発により、紛争が解決しない場合は、やむなく裁判所の判断に委ねざるを得ませんが、この場合でも、裁判所は契約書等の証拠を元に判断することになるので、少しでも有利な結果を導くことは可能となります。
以上、今回は一般的な契約書の役割を見ていきました。次回は「強行規定と任意規定」について掘り下げていきます。
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