- 服部 真和
- 服部行政法務事務所 ギター弾き行政書士
- 京都府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
ここまでで、IT企業の契約関係で考えられる一般的な注意点をみてきましたが、ここでは具体的な注意事項を検討していきます。
IT企業といっても取り扱うサービスは様々ですが、近年非常にトラブルが発生しやすく、また相談されることが多いものに「製作委託契約」での問題があります。
代表的なものが「ソフトウェア開発委託」と「Webコンテンツ制作委託」です。
これらはIT企業の行う取引の中でも非常に複雑かつ多様なもので、従来の民法や商法などの法律では対応できない内容であることがほとんどです。
これらは従来のような「モノ」の製作委託、例えば建物の建設委託契約等とは、かなり性質を異にします。
ただし、大前提としてこれらも依頼会社がベンダーに製作を依頼し、ベンダーがこれを受けてソフトウェア(またはWebコンテンツ)を製作、納品し、依頼会社がこの対価を支払うというものであるから、取引の前提としては従来のような「モノ」の製作委託契約と同様にように思われます。
しかし、ソフトウェアやWebコンテンツというものの内容、価値、技術的特長などは一定以上の知識と経験を備えた者でなければ、把握することができません。
建物の場合でしたら、完成予想図やミニチュアモデルなどで比較的多くの人がイメージを持つことができますし、建設していく過程もビジュアル的に確認することが可能です。
依頼側のある程度の要望なども、言葉やイラストなどで伝えやすいでしょう。
一方で、ソフトウェアの場合、どのようなシステムができるのか、Webコンテンツが出来上がるのかはほとんどイメージすることができません。
また、プログラム作成段階では完成の過程をビジュアル的に確認することもできず、依頼者側も抽象的あるいは利用したい目的内容を伝える程度しか、要望を伝えることができません。
これでは、完成した後に「こんなはずではなかった」「出来上がったものの価値が妥当なのかわからない」といった主張に発展しやすいといえるでしょう。
かといって事前にいくら打ち合わせをたくさん重ねたとしても「画面の切り替えを、FLASHで行いましょうか? Javaスクリプトを利用しましょうか?」などの質問に「どっちがどのように効果があるのか?」などといったやりとりを延々としなくてはならなくなります。
「宣伝効果も加えるために入口に大きな看板を出す」という要望と「宣伝効果を上げるために、各ページに重要なSEOキーワードをちりばめる」とでは、同じような目的をもっていても、後者の場合、門外漢の方にはさっぱりわからないことでしょう。そこで、IT企業の行う契約関係にはこれら想定できる行き違いを解消するような内容が求められます。
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