私がいたIT業界の技術者などは、技術の進化が早いために自分の知識や技術がすぐに陳腐化してしまう傾向がありますので、確かに年齢や経験年数と実務能力が比例しない部分も多くあります。
しかし製造業などで熟練を要する現場の職人さんなどは、経験が長いほど能力が高いでしょうし、どんな仕事であっても年齢とともに重ねた経験は、能力や貢献度に一定の比例関係でも影響することは間違いありません。その程度によっては、年令で賃金が決まることにも納得性があるはずです。
にもかかわらず年功序列が一律に否定的に扱われたのは、年令とともに賃金が上がる、イコール人件費を硬直化させるので好ましくないという経営的事情が大きかったように思います。このために本当は年功序列が理にかなっていた業種や職種でも年功序列的な制度は排除されていき、結果として熟練者、年長者から技術伝承していく風土や風潮が失われて現場の効率や品質に悪い影響を及ぼしてしまったようなところがあると思います。
先日読んだ新聞記事で、「うちの給料は100%年令給です」とおっしゃる社長様の話が出ていました。自分のポリシーに基づき、自社の状況を踏まえて考えられている様子がとても印象に残り、会社の仕組みも安易に流行に流されないことが大切だと改めて感じました。やはり「自分の会社に合っているのか」が人事制度の基本なのではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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