- 大塚 嘉一
- 菊地総合法律事務所 代表弁護士
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
シビックの次に私の車となったのは、いすゞのピアッツァ。デザインは、言わずと知れた、ジョルゼット・ジュージアーロ。ベレットGTR(ベレG)や、117クーペにも載ったツインカムのエンジンを搭載しています。キュートなボディながら、実はホットなハートを隠し持っている、二重人格っぽいところがたまりません。ピアッツァは、ハッチバックを世に広めるのに功績がありましたが、実はもう一つ、あまり人に知られていませんが、社会に重要な貢献をしているのです。
個人的には、ピアッツァは、私の司法試験の受験生時代、修習生時代、そして弁護士になってからも、大活躍してくれました。
私の司法修習の実務修習地は福岡。山あり、海ありの立地から、ドライブコースに困ることはありません。私の数々の楽しい思い出と、いくつかの悲しい思い出を、黙って見守ってくれたのも、ピアッツァです。他の修習生を定員一杯載せ、宮崎県まで繰り出したことがあります。もしもの時の、乗員全員の生涯賃金を計算したら大変な金額になりそうです。当時は、そんなことは全く考えていませんでした。私の酒と薔薇の日々です。
昭和63年、弁護士になって一年目。起訴前の刑事事件を依頼されました。今こそ、弁護士の被疑者との接見はフリーパスですが、昔は、そうではなかった。まず、検察庁に行って、接見を許すという文書をもらい(これを「面会切符」などと言っていました。)、警察署に赴きます。時間も制限されて、15分がせいぜいです。それを打破するべく、全国の刑事事件に熱心な弁護士が、接見妨害を理由に損害賠償訴訟を提起し、少しずつ慣例を変える努力をしていたころです。
私の接見に、当時は修習生、現在は押しも押されぬ埼玉弁護士会の中堅弁護士のY先生が、同行しました。私は、検察庁には寄らずに、警察署に直行しました。Yさんは、私と警察署とのやり取りや、顛末を、ドキュメントにまとめました。自由な接見交通を訴える内容となっています。それは、雑誌「法学セミナー」の1989年11月号に掲載されました。今では、当時の弁護士と警察との攻防を伝える貴重な資料となっています。その頃を境に、それからは、弁護士の接見交通が、自由に行われる扱いが普通になっていきました。そのとき、私とYさんを乗せて現地に向かったのも、ピアッツァでした。
刑事司法の改革に貢献のあった事物に、その白いピアッツァを加えても許される、個人的にはそう信じています。
このコラムの執筆専門家
- 大塚 嘉一
- (弁護士)
- 菊地総合法律事務所 代表弁護士
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