- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:会計・経理
新・事業承継税制の活用法セミナー、
無事終了致しました。
平日の昼間の開催ということもあり、
20名ほどの会議室に18名の参加を得て、
こじんまりとやりました。
ビデオ撮影をしておりますので、
参加できなかったクライアント様には、
DVDにコピーして、お渡しする予定です。
今回は先週末でレジュメを作り上げ、細部のチェックをしていたところ、
前々日22日の政府税制調査会において
相続税の大改正方針、遺産取得税方式への変更という
平成21年度税制改正における基本方針が明らかになったことを
前日23日の新聞で知ったことを受けて、
レジュメの修正はとても間に合わないので、
話す内容の変更を急遽変更して対応させて頂きました。
新・事業承継税制は大きく3点に分けられる。
1.自社株の80%納税猶予
2.民法の特例(自社株生前贈与の遺留分からの除外、自社株評価額の固定)
3.新・制度融資を中心とした金融支援
特に注意しなければならない点は、
1.新制度の適用時期
経営承継法は20年5月成立、10月施行。
税制改正は21年度ではあるが、今年の10月にさかのぼり適用される。
しかし、民法の特例は、経営承継法公布から1年以内に施行という特則のため、
来年1月とか4月とか言われています。
10月1日に飛びつくのは危険です。
2.適用条件(1)持株条件
前代表が単独で過半数もしくは同族で過半数かつ同族内筆頭の保有である場合に、
新代表者が、新制度による株式移転後、単独で過半数もしくは
同族で過半数かつ同族内筆頭の保有になることが必要です。
注意すべきは、現代表者が代表権を手放し、
筆頭株主でもなくなることを想定している、ということです。
お子さんを筆頭株主としてコントロールしようとしたり、
代表権を少なくとも共同にしなければアウトということになります。
また、みなし退職による退職金をもらいたいのであれば、
実態として退職の事実がなければ認められないというのが、判例の考え方です。
3.適用条件(2)5年間の事業継続要件
新制度による自社株の移転を行う場合、
5年間の事業継続要件が課されています。
つまり、5年間は代表を続けることです。
また、雇用の8割以上の維持が要求されています。
もし社長と承継者の2名で事業を行っていた場合、
社長が完全勇退したり、5年間のうちに死んでしまったら、
雇用が1/2になってしまうため、アウトです。
この制度を使いたければ、家族共々長生きしてください。
さらに、株式の保有継続については、年数制限が設けられていないため、
死ぬまで持たなければならない制度とも読めます。
この継続要件は、要件を満たさなくなった時、納税猶予が終わりますので、
その瞬間から納税義務が生じることを忘れないで下さい。
そのほかにも多くの注意すべき点がありますが、
新制度を節税スキームであると思い込んで、
飛びつくと痛い目に合うということだけは忘れないで下さい。
また、従来からの相続税節税スキームと考えられていた手法の一部では、
新制度を使えませんので、ご注意下さい。
事業承継対策や相続税対策は、拙速が最悪です。
長期計画を立てて、税務署から修正申告を求められないように
物証をそろえながらじっくり整えていくことが肝要です。
また、税賠を考えれば、我々もクライアント様に安易な節税スキームを紹介できない時代です。
長期的視点に立って、相続後の税務調査を終えた後、
結果としてクライアント様に喜んでもらえる適正な節税指導をしようではありませんか。