開業初日の飲食店では、知人ばかり集めてパーティーのような騒ぎの開業をする人がいます。初めての外部の人には、とても入店しづらい雰囲気です。本来大切にするべきお客さんは、外部の人のはずです。このような店は、知人の来店が少なくなると同時に、お客さんが少なくなる店です。
身内を頼りにした起業がいけないのは、お店の将来がなくなるからです。知人が来店してくれるのはありがたいのですが、いつもいつも来てくれるわけではありません。やはりお店の営業を継続しようとするなら、外部のお客さん中心に運営しないと、本当の意味での売上げは増えません。
しかも、身内が相手では真剣勝負になりません。お店とお客さんとは、料理や商品を間に挟んで、味とサービスと雰囲気とによる勝負です。時には、お客さんから厳しい意見も聞かされます。席を立つお客さんもいるかも知れません。そのようなお客さんに教えられながら、店も経営者も成長します。
このような経験は、多くのお客さんを集めようとするお店にとっては、大事な通過儀式です。ビジネスである以上、問題は起こりますし、嫌な思いをすることも少なくあります。ただ、ここから逃げていては、お客さんを増やすことはできません。
97年に楽天市場を開業した三木谷会長は、開業初日に32万円を売り上げたそうです。身内には全く知らせず、外部からの購買者だけです。ただ、実際は本人が18万円を注文し、外部は14万円だったと言います。社員の志気を高めるため、この事実は後々まで話さなかったようです。
身内に頼った開業は失敗してしまいます。秋以降開業する起業家の人の中では、30代男性を除くと身内頼りの人はいません。起業には楽な起業などありません。あれこれ考え、失敗し、そのなかで成長します。決して起業に近道などなく、自分で一歩一歩厳しい道を前進していくしかありません。
【一言】
米マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長の伊藤譲一さんが、「日本の起業家は気に入る人間だけを周りに集める印象が強い。人を使うのが上手でなく、自分の能力以上の人材を採用するのを恐れている。自分がお山の大将でいたい」と言っています。その結果が、自分の能力を生かせず、従業員の能力も生かせず、中小企業の社長止まりで終わるケースです。仲良し起業よりは、緊張感のあるビジネスが一番です。
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