- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:労働問題・仕事の法律
労働基準法19条(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
○2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
○解雇制限の解除
次の場合には、労働基準法19条1項本文の解雇制限は適用されない(労働基準法19条1項ただし書、2項、労働基準法施行規則6条)
(1)業務上傷病の療養のための休業期間とその後30日間
ア)使用者が労働基準法81条により打ち切り補償を支払う場合
イ) 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能、かつ、労働基準監督署長の認定
(2)産前産後の休業期間とその後30日間
上記イ)の場合のみ
○「天災事変その他やむを得ない事由により事業継続が不可能となった場合」
①「やむを得ない事由」とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づき、かつ、突発的な事由である。
「やむを得ない事由」に該当するもの
・事業場が火災により焼失した場合(事業主の故意・重過失に基づく場合を除く)
・震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼などにより事業の継続が不可能な場合
「やむを得ない事由」に該当しないもの
・税金の滞納処分を受け事業廃止に至ったもの
・事業経営上の見通しの齟齬のように、事業主の危険負担に属すべき事由に起因して資材入手難、金融難に陥った場合
・従来の取引事業場が休業状態となり、発注品がなく、そのために事業が金融難となった場合
○「事業継続が不可能となる場合」とは「事業の全部または大部分の継続が不可能となった場合」である。
・以下は該当しない。
・事業がなおその主たる部分を保持して継続し得る場合
・一時的に操業中止のやむなきに至ったが、事業の現況、資材、資金の見通しなどから全労働者を解雇する必要に迫られず、近く再開復旧の見込みが明らかな場合
・当該事業場の中心となる重要な建物、設備、機械等が焼失を免れ多少の労働者を解雇すれば従来通り操業し得る場合
・従来の事業を廃止するが、多少の労働者を解雇すれば、そのまま他の事業に転換し得る場合
・労働基準法19条は解雇を制限している。しかし、解雇禁止期間中の解雇予告までを禁止していないから、解雇禁止期間後に解雇する旨の予告を解雇禁止期間中にすることは許される。
・解雇予告期間満了前に労働者が業務上傷病した場合、解雇禁止期間中は解雇できない。ただし、労働者の休業期間が長期間でない限り、解雇予告の効力が停止したのにすぎないので、改めて解雇予告をする必要ない。
・一定期間または一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結している労働者の労働契約は、契約が更新された事実がない限り、その期間満了により終了する。したがって、業務上傷病により療養するため休業する場合でも、契約期間満了により労働契約が終了するから、労働基準法19条1項(解雇制限)の適用はない。
・傷病回復後の解雇
業務上傷病により治療中であっても、休業していない場合、労働基準法19条1項が適用されず、解雇できる。また、休業していても、その後出勤した日から30日間経過後には労働基準法19条は適用されない。
・試用期間中14日を超えて引き続き使用される労働者(労働基準法21条4号に該当しない)が業務上疾病にかかった場合、解雇できない(労働基準法19条)。
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