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尾崎 友俐
尾崎 友俐
(経営コンサルタント)

閲覧数順 2024年04月17日更新

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起業について思うこと 1 ~起業するにあたって

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起業 起業について思うこと

昨今、資本金の制約がなくなったり、取り扱われている書士の方が増えたり安価になったりと、起業は身近なものになり続けているなぁ、と思います。

もし起業を考えられている方、迷われている方の参考になればということで、いくつか起業について書きたいと思います。

今回のテーマは、私が起業するまでの経緯です。

私が起業するに至るまで

詳細は別の機会にしたいと思いますが、私は上京してから2年ばかり派遣社員としてIT業界に関わり、当初は指示を受けたルーチンワークをするだけでしたが、良い現場、良い師匠、良い仲間に恵まれ、メジャーなERPパッケージであるSAPのことや開発のことを学ばせて頂き、3年目になる頃に、フリーランスとして活動することにしました。

理由はいくつかありましたが、ざっくり言えば、やはり派遣社員というだけでマイナスに作用する面があったことと、「派遣社員よりフリーランスの方が、カッコイイ」と思っていたことの2つです。

前者については、フリーランスになったらこれらが解決されるのかというと必ずしもそうではないのですが、後者は当時は23か24のヒヨッコが考える程度なんて、そんなものです。

もちろんどこかの正社員になることも考えましたが、私にとって就職は結婚と一緒で、一生添い遂げるつもりの会社でなければ入社するつもりはなく、かといって一社一社を吟味しようとも思わなかったため、選択肢には入らなかったのです。

さて、こんな甘い意識で数年間にわたって活動できていたことには、いくつか理由があります。

・そもそもIT業界は、資格や公的ライセンスが不要、何らかの協会等への加盟が不要など、起業のハードルが他の業種よりも低い
・フリーのITエンジニアは、初期費用や設備投資がほぼ不要で、在庫を抱えるなどのリスクがない
・フリーのITエンジニアの原価は、殆どが給料=生活費であって、その他のコストはたかが知れている
・つまり、現場に入っている限り赤字にはならないし、現場に入らない期間があっても、すぐに補填できる
・外注をしない限り、まとまったお金が出て行かないため、資金繰りの心配が殆どない
・自分の時間や職能を売るモデルにおいては、例え客先から売掛を回収できなかったとして、骨折り損になる程度のリスクしかない

ここで業種を限らず意識すべきなのは、「初期費用はいくらかかるのか。それを支払うことはできるのか。支払った後、いくら残るのか」ということ、「どのような種類のリスクをどれだけ負い、最悪の場合どんな目にあうのか」ということ、「それでもなお、やりたいのか。そして採算は合うのか。採算が合うまで苦しい時期を耐えられるのか」の3つであると考えます。

「やりたいことをやる」という気持ちが大事なんだとか、まずは難しく考えないでやってみれば?という人もいますが、どんなに小さい規模でも事業をやるわけで、自分が差し出すことができる以上のリスクを背負って悪い状況になった時、必ず誰かに迷惑を掛けてしまうため、ある種の覚悟と目算は必要です。

また、ネガティブになる必要はありませんが、起業の内容を考えている時は大抵の人はドリーマーになっていますので、上記に挙げたことの裏付けは考えるべきです。
ちなみに、私が認識していた根拠には、下記の要素があります。

・SAP業界は、CやJavaおよびネットワーク系など他のIT業界と比べると、エンジニア単価が高い
・SAP業界は、他のIT業界や他のERPパッケージと比べると、大規模プロジェクトが多く、予算も多め、手配する要員も多めになる傾向があった (今でもそうだ、という見方もありますが)
・仮に案件が減ったとして、自分の技量に確固たる自信を持っており、同業者との競争に負ける気がしなかった

フリーランスとして開業した時に、これら全てを考えて決めたというわけではありませんが、その後で何度か自分の身の振り方を考えた際に立ち返ったポイントです。

フリーランサーとして起業した後

起業した後に大事なのは、売上を確保し続けることです。

また、売上を生み出すためには、必ず何らかのリスクとコストを伴います。
具体的にモノ売りの商いで例えれば、商品を売るためには必ず仕入という行為があって、在庫を抱えるわけで、「売れなかったら、ただの損」というリスクを抱えます。(余談ですが、直送ならリスクはないかというとそんなこともありません)

この売上は、どのように算出されるのか?
これを計画可能なレベルまで落とさなければなりません。

ITエンジニアにとって一番シンプルなケースは、1ヶ月160hあたり(通称、1人月)で幾らか、です。
単位が1ヶ月なので、年間の売上は人月単価×月数で求められます。
例えば、1人月あたり100万円で契約し、うち1ヶ月は仕事が決まらない期間があったとしたら、年間の売上は1100万円です。

その他は、1回あたり1週間(5営業日)を要する作業の平均の契約金額が30万円の場合においては、1ヶ月に受注できて且つ納品できる数×契約金額となり、1ヶ月に4本と仮定すれば月に120万、年間1440万になります。リスクを考えてコンサバに見れば、1200万程度でしょうか。

さて、ここから更なる売上が欲しいと思った時に、どのような方法があるでしょうか?
・「1回あたり1週間要する作業」を無理して週に2回取り組む
・土日祝日も仕事をして数をこなす
・自分自身のレベルを上げたり業務を効率化して「1回あたり1週間(5営業日)要する作業」を4日で終わらせる
・契約金額の単価を上げる

重要なのは、売上を確保する方法を計画可能な単位で考えること、また自分が取り組んでいるモデルで稼ぐことができるMAXの売上と最低これくらいは確保できるだろうというラインの双方を認識しておくことかと思います。

これらも、当初から考えていたわけではありませんが、「今のスタイルで自分が稼ぐことができるMAX値は幾らか?」というのは、いつからか常に意識するようになっていました。

法人化の後

フリーランサーとして起業してから数年後、当時のクライアントとの関係、個人事業主だと与信審査が通らない企業があったこと、そもそも個人事業主というだけで仕事を出さないという企業も多くある等を背景に、法人化しました。

ただ、フリーランサーの頃と同じことをやっていたら法人化した意味がないと考えたため、SAPエンジニアとしてだけではなく、ITに関わることを広く学ぶようにし、サーバだろうがモバイルだろうが何の案件でも受けました。

また、商売の仕方として、どこかのITベンダーの二次受け三次受けになったり、体力や知名度のある会社の名を借りることは、正直なところ安定度や確度では一番なのですが、それをメインにするのは面白くなく、マーケティングや顧客の新規開拓に取り組んだり、そのためのWebサイトの構築や維持など、フリーランサーの時分とは比較にならない程にやることが増えました。

私のことはあくまで例ですが、一般的には、個人事業主よりも法人の方が取扱業務も取引先の数も多岐にわたることが多く、いわゆる「会社同士の付き合い、関係」なんてものもあり、出ていくお金の理由も額も増えていきます。逆に、顧客からの入金も増えるでしょう。

色々なことをすればするほど意識しなければならないことは増えますし、こうなってくると、今までは行き当たりばったりだったことが、立ち行かなくなってきます。
事業や資金の計画を立て、その経過の実績を把握し、計画との乖離をモニタリングする等の管理業務について、数も重みも増えていきます。

これは、会社という体を成すことで、個人事業の時にはなかった社会的信用などを得た代わりに、こちらからは管理業務や面倒な手続きという労力を差し出していると言えるかと思います。

まとめ


徒然と書いてしまいましたが、起業にあたってまず考えるべきなのは、下記かと思います。
そんなの当たり前だと思われるかもしれませんが、ちゃんと考えない人が脱サラして起業した末に残念な結果に終わる・・・という流れは枚挙に暇がありません。

【リスクとコスト】
・事業を営むために必要な初期投資と継続的な費用は幾らか。
・資金はどれだけ集められるか。融資はどこからどれだけ受けられるか。いつまでに返済するか。
・初期費用を払った後、どれだけの資金が残るか。
・継続的な費用の支払いを考慮すると、資金はいつまでもつか。
・自分は、どのようなリスクをどれだけ負うのか。背負えるのか。最悪、どんな目に合うのか。

特に一番最後は重要で、例えば「開業資金1000万がパアになる」と「軌道に乗るまで、一年ばかり収入がない」では、全く違います。
多くの人にとって1000万は大金ですが、口座に3億ある場合はリターン次第で前者のリスクは背負えるはずですが、なけなしの300万に700万の借金で確保するという場合は、かなり勇気が要るでしょう。

対して、「一年間収入がない」というのは、パアになる場合と違って、骨折り損に終わったとしても時間以外は失わず、お金は減りません。

【リターン】
・自分は、売上をどのようなモデルで生み出すのか。最低でも「何をどれくらいの期間内にどれだけの数をいくらで売る」くらいのレベルに落とし込む
・そのモデルで、どれくらいの期間にわたって、最大いくら稼ぐことができるか。
・そのモデルで、最低どれくらいの金額は稼ぐことができそうか。
・その金額は、事業の運営に必要なコスト+自分が欲しい収入より大きいか。

平易にいえば、リスクとコストに見合うリターンを得られるか?
リターンに、リスクとコストは見合っているか?
背負うリスクの結果、失うものに覚悟はできているか?というところでしょうか。

これらに折り合いがついたら、私は迷わずGoだと考えています。

個人にするか会社にするかなど、組織形態については次回で書きたいと思います。

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