落語の世界では、相当考える速度の遅い与太郎が古道具屋を開業したり、遊び好きの若旦那が唐茄子屋を始めたり、起業にまつわる話はけっこうあります。江戸時代は、何か思いついた商売で看板を上げると、江戸市民はけっこう面白がってお客さんがついたと言います。
現代は、起業しても、お客さんが店主を育てようなんて余裕はありません。他に比べて、少しでも価格が高かったり、商品知識が劣っていると、ほとんどお客さんは集まってくれません。開業したその日から、勝負は始まっていると思ったほうがよいです。
今は、とても起業が難しい時代です。わたしが考えるに、15年ほど前までは、世界第二の経済大国として国民の給与が高く、購買力も高かったですから、多くの会社が食べていけました。その後、徐々に経済のパイが小さくなっていて、ビジネスの競争が激しくなっています。
当然、新規の会社が参入する余地は狭くなっています。この狭い中に強引に入っていくのですから、競争はますます激化します。しかもこれまでは、物価の下がるデフレ経済でした。大手企業が規模の経済で、大量に仕入れた安い商品を売りますので、ますます小さな会社の仕入れでは売れません。
わが国は外国に比べ、起業のための環境が整っていないといわれます。銀行が起業家に資金を貸すことはありませんし、会社設立のための費用が高く、設立にかかる行政手続の日数も長い国です。第一、起業することが、社会のためになることを、多くの国民は理解していません。
今後、わが国の雇用を増やすためにも、需要を高めるためにも、起業の必要性は高まってきます。会社を設立して仕入れをすることで多くの費用がかかりますし、従業員を雇いますと失業者が減ります。時間はかかりそうですが、既存企業に負けない新たなサービスでお客さんを増やしましょう
【一言】
日本経済はこの20年近くほとんど成長していませんから、国内総生産の約500兆円のパイを取り合っています。もし、起業して収益を上げようとするなら、既存企業の収益が少なくなってもらう必要があります。そのためには、既存企業を上回る魅力あるビジネスを、お客さんに提供しなくてはなりません。厳しい起業環境の中で、魅力あるビジネスを考えて、お客さんに知ってもらうことです。
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