活かすためには知る事が大切ですが
人事は人を活かすしくみを作るのが役割と思っている人事部門の方、そして経営者の方々が多いと
思います。
いいや、違うと異を唱える方はいらっしゃらないでしょう。
でも、実際にどうやって実行するかというと、「こうやっています!」と胸を張れる企業は案外と少ない
のではないでしょうか?
人事制度を導入して、より現場の声を反映した評価のしくみを作ったとしても、人事で集約すると
それは単なる評価結果の数字でしかない、というのが実態のように思います。
評価はある時点からある時点までの期間の人事考課でしかなく、個々の社員の中身まではわかりません。
現場の上司しか把握できていないでしょう。
もしかしたら、上司のレベル次第では何も把握できていない可能性もあります。
「社員ひとりひとりを活かす」というのであれば、下記のような個々の事情まで知る必要があります。
・どんなスキル、経験、得意分野を持っているのか
・希望する将来の方向やチャレンジしたいと思っている事
・具体的に勉強している事柄(資格の勉強や、独学で学んでいる事)
・個人的な事情(転勤ができない、親の介護、パートーナーの事情)
人事が経営に提供する人材のデータベースは、例えば「新規出店」「新規事業」などの異動に際して
有効なもの、もしくは事業目標達成のために新規に採用したり社内での教育や意図的な異動などの
ために用意するものです。
そのときに、人事評価や学歴や資格などの表面的なデータでは十分とは思えません。
適材適所は個々の顔が見えないと難しいものです。
実際に時間と労力を使って、全社員の面談を人事が行っている企業があります。
わたくし自身も人事部長時代には、地方の拠点まで出張し面談キャラバンを実施していました。
3年先までの事業計画にある新規出店には新しい管理職クラスを輩出しないとならず、
その候補数が少なければ採用もしなくてはならないからでした。
また、離職率を下げるためにも、本社にいては聞こえずらい現場の声や、個々の社員の
事情(実は経理を希望していて勉強している、離婚する予定で環境を変えたい)などを知るためには
現場の管理職の面談だけでは十分と思えるレベルの情報にバラツキが生じるからです。
しかし、全社員の面談は、物理的に限界があります。
ひとり30分として、500人の規模なら250時間。毎日朝から7時間の面接で2ヶ月近くかかります。
やる価値のある面談ですがそれだけを専門にしてない限り難しいでしょう。
要は人事および経営が「人の活かし方」にどれだけ関心があり、経営上の必要性を感じるかに
よりますが、今は、面談に100%頼らずともシステムを含めたITの進歩によりやりようがあるという
ことです。
たとえば、株式会社ジャパンオペレーションラボのカオナビ(http://www.kaonavi.jp/company/)
であるとか、面談なら本社にいてもスカイプを使うとか、ですね。
社員が増えていけば、成長段階の企業ほど社員の個々の情報(リアルタイムの)があるとないとでは
戦略の実行に影響が出ると考えられます。
社員を活かすためには、人事は社員を知るということを意図的に戦略的にやらなくては前に進みません。
また、個々の社員の事情を把握する事で、「社員が会社に対して信頼感を増す」というおまけもついてきます。
会社が自分に対して関心を持ってくれる、声に耳を貸してくれるというのは社員満足度をあげモチベーション
のアップにつながります。
人事はともすると全体を数字などで把握しているだけで、役目を果たしていると思いがちです。
ためしに、来月、新規事業(会社が未経験の分野)を立ち上げるとなった時に、新規の事業部隊
10名の選出が出来るかどうか、考えてみましょう。
安達瑠依子
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