小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「朝令暮改」を歓迎する
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ある本を読んでいる中で、部下が上司の信頼を得る行動の一つとして、「上司の朝令暮改を歓迎する」というものがありました。
部下の立場からすれば、上司の指示が度々変わったり、突然何か言われたりという事があると、「初めからそう言えよ!」とか「もっと早く言えよ!」とか「あの人はいつも思いつきだ!」とか、肯定的に捉えるのは結構難しいものです。私などはまさにこんなタイプの部下だったので、今思うに上司にしてみれば、すごく扱いづらい部下だったはずです。
冷静に考えてみれば、「絶対に朝令暮改をしない上司」は「一度決めたことは絶対変えない上司」とも言え、それが良い上司なのかと言えば全くそうではないと思います。部下からすれば「あいつは融通が利かない!」とか「柔軟性がない!」とか「まともな判断ができない!」などとなるのでしょう。状況に合わせた判断や指示命令を放棄しているという事で考えれば、実はこちらの方がタチが悪いと言えるのではないでしょうか。
初めから適切な判断と指示命令ができるに越したことはありませんが、今のように変化が激しい時代、先の先まで見通して行動することは大変難しいことです。その時その時に見えている情報の範囲で逐次判断していくというやり方にせざるを得ず、そういう点では朝令暮改は必須ということになります。
朝令暮改が否定的に捉えられるのは、上司の側にも責任があります。「なぜ変わったのかの理由や背景をきちんと説明しない」、「変更内容やその理由に納得性がない」、「意見を聞かずに一方的」などがあるでしょう。部下と認識共有する姿勢が希薄なことが多いように思います。
私は自分が上司という立場になり、上司と部下の両方の立場が分かるようになってから、徐々に理解できるようになったということもありますが、その当時、もう少し相手の立場(朝令暮改をしなければならない上司の立場)を理解できる視野があれば良かったのに、などと今更ながら思うこともあります。結局相手の立場を考えながらの相互理解に尽きるのではないかと思います。
もし朝令暮改ばかりの上司にイラッとくることがあったら、一歩引いて「なぜそうしなければならなかったのか」という上司の立場を考え、その立場を理解した上で上司に確認してみるというようなことをしていくと、案外良い関係が作られていくようになるかもしれません。
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