堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
チア☆ダン3 認められたい、愛されたい、安心したい欲求
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自分にはやりたい事があると言う人もいれば、やりたい事が思い浮かばないような人もいます。
今季オンエアーされている「ジョジョの奇妙な冒険・黄金の風編」では、
主人公の決め台詞で
「このジョルノ・ジョバーナには夢がある!」
と言うのがありますが、「夢」と言い換えても良いかも知れません。
人には「私はこうしたい、こうなりたい」と言う願望があるものです。
そんな欲求にもレベルと言うか種類があり、必要最低限の欲求から、より高い次元の欲求まで順番にピラミッドのように
層を成しており、下の方の願望が満たされるにつれ、より高い次元の願望を満たしたくなるものです。
こうした事をマズロー博士の「欲求階層説」と言う学説に基づいて考えてみたいと思います。
マズロー博士の「欲求階層説」では、必要最低限の「こうありたい」と言う願望を下から順に書くと
①生理的欲求
②安全の欲求
③愛と所属の欲求
④承認と自尊の欲求
⑤自己実現の欲求 (真・善・美・独自性・自立・完全性などに対する欲求)
となります。
①から④までは生きる上で「基本的欲求」と呼び、①の欲求が満たされないと上の②の欲求まで実現させる余裕が無く、
いつまでも生理的欲求を持ち続け、次の段階に進む事は難しいとされるため、「欠乏欲求」とも呼ばれます。
⑤は基本が満たされた後のより高次な欲求であるために成長欲求と呼ばれます。
①から④までが満たされた段階で、やっと⑤である「自分のやりたい事」を感じ、それをやってみようと思える段階と
なるようです。
もう少し詳しく書いてみます。
①生理的欲求とは、生きる上で必要なものを得たいと思う欲求です。
お乳が欲しい。気持ち良くぐっすり眠りたい。おしっこをしたい。ウンチをしたい。大人であれば性欲を満たしたいなんて本能も生理的欲求です。
生まれたての赤ちゃんなら、ほっておいてもお母さんがそうした欲求は満たしてくれるのが一般的でしょう。
が、もし赤ちゃんの生理的な欲求を察知してくれないお母さん(赤ちゃんがおっぱいが欲しくて泣いているのに、なんで泣いているのかピンと来ないお母さん)や、
おしめをすぐに変えてくれる人が周囲にいなかったら、こんな基本的な欲求さえ満たしてはもらえない事になってしまいます。
②安全の欲求とは、文字通り安心して安全に暮らせる環境を得たいと思う欲求です。
子供なら、それも親が満たしてくれるのが一般的です。
親が自分を守ってくれる、そんな健全な依存心が当たり前に育ち、満たされることが必要です。
ですがもしこれが、親がいつ自分を怒鳴り出すかわからなかったり、危険な外の世界から家に帰って来ても家にも誰も
いなかったり、日替わりで自分の世話をしてくれる人が違っていたりしたらどうでしょう?
外から守られて安心して安全に過ごせる環境や、その環境を提供してくれる人との関係を含めて家の様な場所を
「安全基地」
と心理学では言います。
対人との関係に問題を抱えてしまう人の多くは、この「安全基地」が充分安全では無かった方が多く見受けられます。
両親の離婚などで、当たり前にいた両親の片方がいなくなったりしても、
やはり安全基地は安全な気がしなくなってしまうものでしょう。
付いて行った片親自身、そんな境遇では精神的にも不安定になってしまうでしょうから、
子供の方が親の面倒を見なければいけない様な状況になってしまうことも考えられます。
何らかの理由で、守られる子供でありながら、守る大人の様な役割を担わなければならいことで、
「無邪気な子供時代」が失われてしまう事例も多く見受けられるものです。
そのような苦労をされた方は、人に甘える事(頼る事)が出来なくなってしまいます。
③愛と所属の欲求とは、家族や恋人、友達、同僚、サークル仲間など共同体の一員に加わり、一体感を得たいと言う欲求です。
いじめ被害等に合い、その欲求が満たされず、傷が残ってしまうことが欲求が満たされない典型です。
今回のブログの題材である「チア☆ダン」に登場する負けず嫌いの転校生・汐里さんは、転校前の学校でのチアダンス部での仲間関係につまずいてしまったと言えるでしょう。
汐里さんの願望である「打倒JETS!」「全米制覇!と言う欲求は、本来⑤である高次の自己実現・成長欲求と言えるものだと思うのですが、
実はこの愛と所属の欲求段階でのつまずきが満たされておらず空周りしてしまい、
その先の④や⑤の願望を満たすだけの条件が不十分だったのです。
言いかえるとこの「チア☆ダン」は、思春期の主人公達一人ひとりが③④⑤の願望を満たして行けるだけの条件をクリアして行く成長物語なのだと思います。
先程引き合いに出した「ジョジョの奇妙な冒険」や国民的マンガ「ワンピース」、多くのロールプレイングゲームのテーマがこの「愛と所属の欲求」の課題が背景にあるような気がします。
ちなみに「ワンピース」は、謎の大秘宝・ワンピースを我が物にしようと世界の海賊たちが戦うお話ですが、
その目的を達するためには仲間たちとの絆や一体感が必要で、
つまりジグソーパズルの一つ一つのピースが合わさることで初めて一つの大きな絵が出来上がるみたいな
裏のテーマが作品の題名に込められているのではないだろうかと勝手に想像しています。
そうしたテーマの作品やゲームが多くの人から支持を得るのは、「愛と所属の欲求」が大変重要であると同時に、
リアルな今の現実世界では、それを得るのが非常に難しいことになっているからなのではないでしょうか?
④承認と自尊の欲求とは、自分が世の中で役に立つ存在になりたいと言う欲求です。
認められたい、自信が欲しい、自尊感情を持ちたい、とも言えるでしょう。
愛と所属の欲求の延長線上にあるものかと思います。
これには2種類あって
●自己評価として自分が満足出来る存在になりたいと思う欲求
●他者からの信望、地位、名誉、優越、承認、重視などを求める欲求
お金が欲しい、出世したい、恋人が出来て愛されたい、、、。
人それぞれ色々な願望があるでしょうが、一言で言えば「人から認められ、必要と思われたい」みたいなものではないでしょうか?
私が思うに②と③の安全の欲求や所属と愛の欲求がある程度満たされていれば、
すでに自分は「人から大切に思ってもらえる存在なのだ」と思える基礎は出来ているのではないかと思います。
しかし、その段階の欲求が満たされていないと、
「自分は何か役に立つ事をしなければ、愛してもらえないのだ。認めてもらえないのだ」
と、非常に「条件付きの愛」になってしまうように思います。
シンプルに「人の役に立ちたい」「人から必要に思われたい」「人に愛されたい」と思えるのは素晴らしい事だと思うのですが、
これが「役に立たなければ必要に思ってもらえない」「期待に応えなければ愛してもらえない」となると、
もはや脅迫されているような心情になってしまうことでしょう。
実際、強迫観念の背景には、こうした条件付きの愛が影響している事も多いものです。
②の安全の欲求さえ満たされていない事になってしまいます。
役に立たなければ捨てられてしまうような世界で生きていることになるのですから。
カウンセリングの経験上、人間関係で悩みがちな人や、対人恐怖的な傾向がある方は、
そんな安心・安全感が満たされていない場合が多いようです。
躾として「良い子でいなさい」「長男らしくしなさい」「女の子らしく誰にでも優しくしなさい」「良い大学に入りなさい」
なんて普通の家庭では当たり前に条件付きのメッセージを言われがちです。
しかし中には本当にその条件を満たさないと「お前には失望した」とか「お前はバカなんだから、何をしたってダメなのよ!」とかいつも否定されてしまう家庭があったりするのです。
なにも悪い所なんか無いのに「キモイ」とか「ブス」とか言われて、学校でいじめられてしまったりするのです。
普通に一生懸命仕事をしているだけなのに、上げ足を取られたり責任をなすられてしまったり、搾取されてしまったり、
理不尽な出来ごとが降りかかって来たりします。
そんな歪んだ真実とは違う世界で生きる事を強いられてしまったら、何を信じて生きれば良いのでしょう?
歪んだ世界の見え方が、その人にとっては現実の世界になってしまうことでしょう。
野生動物がジャングルで生きるのは過酷なものでしょうが、弱肉強食と言う不変の法則はあるものです。
そんなルールも無い歪んだ世界で生きるのは、ジャングルで生きるよりも危険かも知れません。
まだまだ続きます。
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