対象:会社設立
回答:1件
傷病手当金の受給中は、副業等で働くのを控えるのが適当です
lily さん、こんにちは。傷病手当金受給中の副業としての報酬に関して、法人をたてて休職中の副業の報酬を法人に振り込んでもらい休職後に役員報酬として受け取る方法または会社を立てなくても確定申告をする方法における問題についての質問ですね。
結論から言えば、傷病手当金は業務外の病気やケガ等の療養で労務に服することができず給与が支給されない時の生活の保障や支援を目的としています。働けないというのが前提になっていますので、傷病手当金の受給中は副業やアルバイトはできないと認識するのが一般的です。
ただ、例外事例(内職や一時的に軽微な労務は可能なケース)もありますので、保険者である勤務先や健康保険組合に確認するのが良いかと思われます。
傷病手当は雇用保険(求職時の傷病)からの給付、傷病手当金は健康保険(業務外の傷病)からの給付です。ここでは、傷病手当金の受給を前提とします。
傷病手当金は、以下の条件を全て満たす時に受給できます。業務外の病気やケガで療養中であること、療養のための労務不能であること、4日以上仕事を休んでいること、給与の支払いがないことです。傷病手当金の1日当たりの支給金額は、(支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷(30日)×(2/3)となります。また、支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算として1年6カ月となっています。
労務不能であるか否かは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断されます。厚生労働省の通達(平成15年2月25日)によれば、労務不能の解釈運用では、「本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。
したがって、被保険者がその提供する労務に対する報酬を得ている場合に、そのことを理由に直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかの判断をされたいこと。」としています。
報酬を得ていることで直ちに労務不能でないと判断するのではなく、労務内容や報酬額を検討のうえ労務不能を判断するようにといっています。
ただ、lily さんの場合、副業を休職中に辞めることはできないとあり、一時的に軽微なものか、作業単価の安い内職程度のものかが問題になるかと思われます。トラブルを防ぐためにも、「どのような内容の仕事でどの程度の報酬があるか」などの説明を事前に保険者である勤務先や健康保険組合にしておくことが大事になります。
なお、傷病手当金の受給中に収入を得ていることが発覚すると、不正受給とみなされて傷病手当金の支給停止や返納命令に加え、悪質と判断された場合は詐欺罪として刑事罰を受ける可能性もあります。傷病手当金の不正受給には時効がありません。労働保険の場合において不正な行為や申告により基本手当等を受けようとした場合の大阪労働局の事例・処分等を添付しますので、ご参照ください。
一方、役員報酬は、毎月定額を支払うのが基本(定期同額給与)です。未払い金を計上することは可能ですが、その背景や期間などによっては損金算入が認められないこともあるため、未払い金を計上する際は慎重に対応することが求められます。
また、傷病手当金を受給しながらの法人設立自体は可能です。ただ、法人設立には開設費用や手続きが必要となる点、役員報酬が支払われるなら社会保険加入の対象となる点の対応に加え、勤務先とトラブルが生じないように事前に法人設立の適否を確認しておくのが肝要です。役員報酬は不当に過大な損金算入を防ぐために法人税法上厳しいルールが設けられていますので、株主総会により報酬の決定が行われる点も認識しておいてください。仮に法人を設立する場合、副業報酬の振込先というよりも将来の企業の発展性を見据えた起業を想定されるのをお勧めします。
最後に、確定申告等についてご説明します。傷病手当金の受給と副業の考え方は法人設立と同様の問題がありますが、副業の収入は原則事業所得や雑所得に、役員報酬は給与に該当します。そして税法上副業の所得金額が20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要となります。また、報酬を支払う先は、法定調書等を税務署等へ提出することになり、官署では一般的に勤務先以外から報酬が支払われたことも把握できます。
いずれにしても、仮に勤務先で副業が認められる場合でも、トラブル回避のために傷病手当金を受給中は健康回復を優先して役員としても働かず、休職明けの決算期から役員として働き報酬を受け取るのが適当かと考えられます。傷病手当金受給中の具体的な対応や役員報酬の決め方等については、法律・会計の専門家などにご相談されるのをお勧めします。
以上となります。lily さんのご健勝と益々のご活躍を願っております。
全国健康保険協会(協会けんぽ)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/
厚生労働省通達(平成15年2月25日)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb1103&dataType=1&pageNo=1
大阪労働局(不正受給について)
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/hourei_seido/situgyo/minasama/fusei.html
回答専門家
- 小松 和弘
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ホットネット株式会社 代表取締役
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