対象:住宅設計・構造
回答:4件
中舎 重之
建築家
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切妻屋根について
屋根の掛け方と形には、お客様の好みで良いと思います。
建物の平面形が東西に長い長方形なら、
屋根の棟は東西を軸とし勾配は南北になります。
形は、切妻、寄せ棟、片流れ、を選びます。
平面形が東西に長い長方形でも、棟を南北にして勾配を東西にするケースは、
建物中央にロフトを設ける場合に行います。
この時、注意が必要なのは南北方向の風圧力が大きくなり、
南北方向の耐力壁を多く設置する必要があります。
屋根の形と勾配は、建物の平面形に逆らわずに、
素直に決める事がコストダウンになります。
同時に、構造耐力上でも、合理的になります。
メンテナンスでも有利にもなります。
以上です。 2014.8.6 中舎重之
伊藤 一郎
建築家
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日差しのコントロールと街並みを考える
東京で設計事務所をしております、伊藤と申します。
ご質問拝見しました。
「南北に流れる切妻」とは、屋根の一番高い部分である「棟」が東西に向き、北と南にそれぞれ葺き下ろした屋根ということでよろしければ、結論としては「あり」だとお答えします。
日本の四季を考えますと、夏に高いところから差す暑い日差しはなるべく遮りたく、冬に低いところから差しこむ暖かな日差しは家の中まで取り込みたいので、
南面にはある程度大きな窓を設けたくなり、そこにはある程度深い庇が出ていることが望ましいのです。
そのためには南に向かって屋根が葺き下りているのはとても合理的なのです。
もちろん屋根は東西に葺き下ろしておいて、南面の日除けのための庇は別途設けることでも良いのですが。
そういった考えとは別に、街並みの観点から、道路から見た時の屋根の向きと建物への入り方を考えるということもあります。
切妻の場合、道路側に屋根の山型を見せておいてそちらから建物に入るのを「妻入り」といい、道路側に軒先が水平になる側を見せておいてそちらから建物に入るのを「平入り」といいます。
古い街道筋などで、妻入りか平入かで統一されている美しい街並みが多く残っています。
参考までに画像を添付しますが、【画像1】が兵庫県篠山の妻入りの街並み、【画像2】が愛知県犬山の平入の街並みです。
地域によっては建て方の習慣がある場合もあるかもしれません。
住宅地でしたらここまではっきりした屋根の統一感はないかもしれませんが、道路側から近隣の建物を見て統一感があるようでしたら、是非それに合わせるのが良いでしょう。
北側斜線や道路斜線など法的な高さ規制によって、屋根形状が大きく制限されることもありますので、その点は担当の設計者にご確認下さい。
以上、ご参考になれば幸いです。
評価・お礼
mkt0629さん
2014/08/10 20:24とても迅速に、尚且つ丁寧にアドバイス下さり助かりました。
無料にも関わらずこんなにもしていただき恐縮です(笑)
が、いただいたコメントをもとに家づくりの参考にさせていただきます。
この度は本当にありがとうございました。
伊藤 一郎
2014/08/11 09:48高い評価を有難うございます。
ご参考になるようでしたら嬉しいです。
素敵なお住まいが実現できますようにお祈り申し上げます。
上村 美智夫
建築家
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切妻屋根の向きと活かし方
はじめまして、PAO建築設計の上村です。
結論的には、どちらのケースも共に存在し、おかしくはないと思われます。
簡単に説明を試みてみます。
1、家の顔として妻側(勾配のある屋根が左右に流れる面)を見せたい(象徴性)
道路側から等建物が良く見える面を、大きな壁面が取りやすい妻側とすることで、その家の顔としての、堂々としたデザインとする事が可能となります。
2、敷地の形状と関係するもの
長方形などどちらか一辺が長い敷地の場合、長手方向に棟木(屋根の一番高い所)を伸ばし、長手方向の両端を切妻とすることが多いでしょう。これはこの方が一般的には構造的に合理的で、ローコストにもなります。また、雨漏り等のリスクも最も小さいでしょう。
3、大きな壁面となる妻側を活かしたい(採光・デザインなど)
妻側の外壁は上部が三角形にとがった大きな壁面となりますので、ハイサイド窓(高窓)など大きな窓を取り付けることは可能で、広い部屋でも十分採光することができます。これらのことで、妻側はデザインする要素も多く、その住宅を象徴する個性的なデザインが映える面ともいえます。
上記の1~3の組み合わせの中で決まるのでしょうから、どちらのケースもありと言えるでしょう。
画像の説明
■国分寺の家
大きな壁面を活かしての道路側の例
この住宅は右側上部1点のみが最も高い、2方向に流れる片流れ屋根となっています。
詳細は下記(プロファイル内の私のページ)をご覧ください。
http://profile.ne.jp/pf/k-michio/g/l-5983/
以上、少しでも参考になれば幸いです。
直接聞いてみたいことがあれば、「この専門家に相談する」ボタンをクリックして、お尋ねください。相談は無料です。
上村 美智夫 / Michio Kamimura
PAO建築設計
http://www2.gol.com/users/paoarchi/ E-mail paoarchi@gol.com
橋本 健
建築家
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最近では、南北に流す方が注目されてきていますよ。
mkt0629さん、こんにちは。
ご質問の件、敷地の形状や大きさにもよりますが、最近では南北方向に流す屋根が注目されてきています。これは平均気温が1度以上高くなったことと省エネに起因します。今から20年前は、南側に大開口をとり、太陽光がさんさんとふり注ぐリビングルームが人気でした。我々建築家も南側のデザインを重視し、大きな開口部をどのようにつくるか、といったことに注意をはらっていました。しかし今日、南側の開口部が大きくなればなるほど、ガラスの断熱性能や空調機の出力を上げねばならず、それがコストアップにつながる。果たしてそのようなすすめ方で良いか、というふうに変わってきています。
南北に流すという考え方ですと、南側に屋根の先端が延びるということになります。私共ではそれを大きく張り出させ、『夏の日射を屋根で遮り、冬の日射(角度が低くなることから)を取り込む』ということを検討しています。(添付断面図)さらに室内の空気の流れに注目し(エアサーキュレーションといいます)暖められた空気と冷えた空気を循環させ、快適な環境が得られるよう工夫しています。さらにルーバーを装着することで、周囲との視線を適度に遮りつつ室内に影をおとすことで、時とともに移ろう表情をつくりだせないか、と考えたりしています。(添付写真)
このように屋根の架け方を変えることのメリットはどこにあるかを検討し、心地よい環境へとつなげる試みが大切ではないでしょうか。「ご自宅を含む複数の建物が並んだ時どのように見えるか」という街並の視点も大切ですが、それをセオリーとせず、『時代を見据えた家づくりを考えられてはいかがでしょう?』
(現在のポイント:-pt)
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