対象:住宅設計・構造
回答:2件

石川 嘉和
建築家
6
姉歯事件後の建築基準法改正は手続きの厳格化が主なポイント
はじめまして。邑都(ゆうと)設計工房の石川と申します。
姉歯事件(耐震偽装事件)は本来の構造計算書、構造図の一部を鉄筋本数等を減らしたものに差し替えて確認申請を通し、その偽装された設計図書に沿って工事をしたという事件でした。構造計算基準ではなく確認申請の手続きが問題になったものなので、その後の法改正は確認申請手続きの厳格化と、不正をはたらいた建築士に対する厳罰化というのがその骨子です。従って構造計算基準自体は、耐震壁規定の強化などを除いてほとんど変更されていません。
一方高強度コンクリートの技術が進んだことなどから高さ60m超(概ね20階建てマンション相当)の超高層の建物でもSRCでなくRCでの設計がやりやすくなり、十数年前くらいから主に集合住宅でRC造が増えてきました。スパン(柱と柱の間隔)を長くして空間を広く使いたい事務所ビルでは柱梁が大きくなりすぎるなど実用的ではないので採用されることはほとんどないですが、細かく部屋を区切る必要があるためスパンが短いマンション建築ではRCで高層建築を作るのは非常に例が多いです。
手続きの厳格化の目玉として出てきたのが構造関係設計図書のピアチェックです。これは確認申請を受け付けた確認機関が審査した後、同じ構造設計図書をあらためて別の機関が審査するというダブルチェックの制度で、適正な審査が担保され姉歯事件のようなことは起こりにくくなったと考えられています。
確認申請が正しくなされるかどうかとは関係がないのですが、超高層マンションでは(特に地盤の軟弱層が深い地域で)地震時にかなり揺れることを念頭において購入検討をされたほうがいいと考えます。地盤のことは設計図書に書かれていますのでモデルルーム等で見せてもらえると思います。
評価・お礼

nobaraさん
高強度コンクリートがあると聞いていましたが、こんな風に活用されているんですね。
今後は、マンションは殆んどが、RCで出来るのですね。
有難う御座いました。

石川 嘉和
早速の評価連絡ありがとうございます。多少なりともお役に立てれば幸いです。姉歯事件に端を発する問題は建築基準法改正、建築士法改正、瑕疵保険制度創設など多岐に渡っています。それぞれ良い面困った面両面の影響を建築界に及ぼしています。また何か疑問がありましたら御相談ください。

本田 明
工務店
3
姉歯事件後の法規制の関係とは違うと思われます
高層棟はSRC,低層棟(6階まで)はRCということでしょうか?
それとも、SRCとRCの混構造の一つの建物ということなのでしょうか?
取り合えず、話を進めます。
※技術歴史的なお話になります。
コンクリート強度は、現在でも一般的には210~240kg/cm2
そして以前(1990位まで)は高層と呼ばれる10F程度の建物に使われる少し特殊なコンクリートでも360~450kg/cm2というのが、
コンクリートというものの素材の常識でした。
当時のコンクリート強度から導き出される高層住宅のイメージは、
地震力荷重が大きい下層階は、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で、
そして地震力荷重が比較的に小さくなる高層階は鉄筋コンクリート(RC)造層階で、ということになります。
ですから、1980頃の超高層(20~30F)などのマンションを建設するパイロットプロジェクトは、
鉄筋コンクリート構造ではなく、純鉄骨造でした。
兵庫県芦屋市にある高層住宅群(芦屋シーサイドタウン)が、それです。
MYブログへリンク10/01/17おのぼりさんが芦屋へ行っhttp://hondakenchiku.com/2491.html
建築価格の一般的な考え方からすると
100m2以下で小さく区切られ、
耐震壁(地震荷重に対抗できる強度を持った壁)がそれなりに配置できるマンションなどの平面プランの建物は、
純鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造より製造コスト的に鉄筋コンクリート(RC)造の方がでメリットがあります。
そこでその後、鉄筋コンクリート(RC)造高層マンションを作れないかという技術課題が設定されたようです。
結果として、コンクリート強度を上げる技術開発が進み、
現在では高層マンションに使われるコンクリートの強度は600kg/cm2とか、
場合によっては1000kg/cm2近い強度のコンクリートが開発され、
それらと、高強度の鉄筋を組み合わせた、高層の鉄筋コンクリート(RC)造のマンションが建築できるようになりました。
「RC,タワーマンション」で検索すると45階建てという建物も建築されているようなので、
不動産経済的や都市計画法や建築基準法の高さの規制で、階数が決まっていて、
技術的には、ほとんど鉄筋コンクリート(RC)造で対応可能である、というのが現状のように思われます。
補足
※鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造と鉄筋コンクリート(RC)造との混構造について
阪神淡路の震災は、世界的に見ても初めてに近い大都市の高層建築群へのデータがちゃんと取れた地震でした。
日本という地震大国で、多くの地震計が配置され、どのような地震がこの都市を直撃したか、
そして実際の建物がどのような被害を受けたか、という多くのデータが残りました。
そこで、かなり珍しい被害形式の報告された事例に、神戸市役所の中間階の崩落というのがあります。
リンク ある建築家の見た阪神大震災(6) 神戸市役所http://www.janjannews.jp/archives/2832026.html
この建物は、崩壊した階の上部は鉄筋コンクリート(RC)造、下部は鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で
その構造が変化する階においての柱の強度の極端な変化に原因があったといわれています。
ただ建物が1957年と相当古く、
構造計算自体の地震力の評価も当時はあまり大きくなかったのも原因の一つではないかともいわれています。
一概に、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造と鉄筋コンクリート(RC)造との混構造に問題があるというのではありません。
神戸の震災でも、昭和57年以降の耐震基準で構造計算された建物では
どんな種類の構造の建物でも致命的な被害はほとんど報告されていません。
しかし御質問の建物が、昭和57年以前の建物であるならば、耐震診断といういうことをされるのも、
今後も安心に住まわれるためのよりどころになるのではないかと思います。
ただ、それには費用もかかりますし、マンションは権利者も多くそのようなことが中々進まないのが現状です。
リンク 国土交通省>マンション耐震化マニュアルhttp://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/07/070622_.html
※最後に、現在の地震関連の技術について
日本のEディフェンスという姫路にある施設は、20m位の建物なら、実物大で建物の地震が再現出来る装置です。
そこで、JR鷹取波やJMA神戸波という地震波は、実際に震災の時に記録されたもので、最大級の地震波として、
良く実験に使われる地震波です。こんなすごい実験が、日々行われています。
独立行政法人は、最近無駄使いなどと良く槍玉に挙げられるのですが、
こういう施設には、今後もちゃんと研究費が回ることを望みます、ということも含めてここに書いて見ました。
リンク 独立行政法人防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター>研究内容>加震実験映像
http://www.bosai.go.jp/hyogo/movie.html
評価・お礼

nobaraさん
大変詳しく、阪神淡路震災の例をいくつも挙げて頂き判りやすかったです。
地震国日本での、耐震の建物構造は必要ですね。私の所有マンションは、S56年10月竣工で、建設会社も分譲会社も倒産し、設計図構造計算書もありません。店舗・事務所・FAMILY・ワンルームと混在し、58区分所有で建替えの話が持上がり、耐震診断もせず、平米当たり46万円負担で2年半別の仮住まいを探せとと言われています。困っています。

本田 明
高評価を頂いてありがとうございます。とだけ答えるには、申し訳ないような評価コメントが付いています。
こういうところでお答えするには、あまりにもヘビーな問題で、どうお答えしてよいのやら。
あまりにも情報の少ない中で、独断でお答えするのもどうかとは思うのですが・・・
特にテナントなどが入っている場合、その入れ替え毎に、工事が行われます。
その以前にテナント工事にはいった業者全てが、ちゃんとした構造の知識を持っているということはないかもしれない、
という思いもあるので、建築年次・1Fがテナントという二つの条件からは、
立て替えるという判断も、妥当性が高いようにも思われます。
首都圏にはこのような事例に精通された方も沢山おられると思われますので、
納得が出来ないようであれば、何か公的な機関ででも、
(市役所や建築士事務所協会などの相談窓口など)
ご相談されれば、良いアドバイスが受けられるのではないかと思います。
(現在のポイント:2pt)
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