対象:労働問題・仕事の法律
退職後の請求について
弁護士の七字と申します。
「給与マイナス分」という趣旨が今ひとつよくわからないのですが,これがどういう趣旨のものなのかによって,時効期間も変わってくると思います。
? 仮に,これが,貴殿の配偶者が,仕事上何らかのミスを犯して,それについての責任分を給与からマイナスするという趣旨であるとします。
そして,会社が,不法行為を根拠に損害賠償請求分の支払を求めているのだとすると,その消滅時効は,会社が仕事上のミスによる損害の発生を知ったときから3年間で時効が成立します(民法724条)。
従って,今回のケースの場合,時効が成立しており,支払の必要はないということになると思います。
? これに対して,単に会社が誤って給与を多く支払ってしまい,それを請求しているとします(いわゆる「単なる」過誤払いのケース。例えば,給料25万円なのに,誤って50万円を振り込んでしまったというケースです。ただ,この「単なる」過誤払いのケースで,「給与マイナス分」という言い方になるのか,という疑問はありますが・・・)。
この場合,会社は,不当利得返還請求権(民法703条)を根拠に,25万円の支払を求めていることになります。
この場合の時効期間をどのように考えるのかについては,商法522条を適用して5年と考えるという説と,商法522条の適用を認めず,原則どおり,10年(民法167条)と考えるという説とがあります。そして,判例は,後者の考え方を採用して,10年と考えています(本件のような過誤払いが問題になったケースではありませんが,最高裁平成3年4月26日判決・判タ761号149頁,等)。
判例に従うと,?の趣旨で,不当利得として25万円の請求をされた場合,時効は完成していないということになりそうです。
補足
ただ,弁護士として,貴殿のサイドに立ってアドバイスをさせていただくと,まずは,「5年以上経過しており,時効が完成している。」と主張してみれば良いと思います。
相手方がこれであきらめてくれるかもしれないからです。
一般的にいって,5年以上経過した25万円の請求について,時効のリスクがあるのに,わざわざ弁護士を雇って訴訟を起こしてくる可能性は低く,「5年以上経過しているから時効だ。」と主張した場合には,相手方があきらめてくる可能性は高いと思います。
万一,時効の主張に対し,相手方が反論してきた場合には,改めて弁護士に相談されることをお勧めします。
なお,相手方との交渉に際しては,「支払います。」と言ってしまわないように注意してください。相手方に一旦,「支払います。」といってしまうと,時効完成後に債務を承認したととられ,時効の主張ができなくなるからです。
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この回答の相談
妻のことなのですが。1999年2月に会社を退職をしましたが、2006年10月に「1999年3月、4月支給の給与マイナス分が未入金なので、25万円を振り込むように」という内容の書面が郵送で会社より来ました。基本的には、… [続きを読む]
優駿さん (神奈川県/43歳/男性)
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