これまで不動産市場は何度かクラッシュを経験してきました。
一番大きなクラッシュは1989年から始まる「バブル崩壊」でしょう。
このブラックマンデーから始まるバブル崩壊は、すぐに不動産市場には影響はありませんでしたが、少しずつ忍び寄るように、そして一気に市場は崩壊しました。
幸い、私はこの時まだ不動産業界にはいなかったのですが、その後業界に入ってから先輩方からそれこそ耳にたこができるほど聞かされたものです。
『バブルの時はよかったなぁ~』、と。
その後もサブプライム問題、リーマンショック、東日本大震災へと不動産関連にとっては良くない出来事が発生しました。
この中で東日本大震災は、自然災害なので我々には予測できませんが、サブプライム問題の時などは何となく変な空気が流れ始めたのがわかったものでした。
以前のバブル崩壊とも重なりますので、ここで検証しておきます。
1.物件がよく売れるようになり、価格が上昇気味になる。
2.これまで仲介業しかやっていなかった大手業者が中古物件の買取を始める。
3。これまで渋っていた銀行が結構、融資が出やすくなる。また、物件の条件についても厳しいことを言わなくな る。
4.舶来の(アメリカ)横文字の何かが入ってくる。(デリバティブ、ノンリコースローン)
5.益々、物件価格が上がる。
6.金融庁などから銀行へ不動産に対する融資姿勢への何らかの圧力が入る。
7.公示地価が発表され、高値を付けるをNHKなどで報道される。
8.銀行が融資しなくなる。
9.価格崩壊が少しずつ忍び寄り、その後一気にクラッシュする。
大体、こんなパターンでした。
先程書いた、先輩が『バブルの時は良かったなぁ~』と言っていた時期は1~5で、その時期は黙っていても物件が売れるので仲介料は入るし、おっかなびっくり物件を買ってみたら利益を出して売れるのでこのように回想するのです。
「バブル期」は日本全体が好況を感じていたので、一般の方も株や不動産でそれなりの「バブル感」はあったとお思いますが、サブプライム問題前の「ミニバブル」については、そんなに不動産が良かったと思われる方は少ないのではないでしょうか。
業界ではいわゆる「ファンド」盛りで、リートが上場されることもあり、大小様々な内外の「ファンド」が物件を買い漁っていました。
新築予定の物件をまだ何も建っていない土地の状態で買ったり、とてもあり得ない賃料、(普通は想定賃料と呼びますが、私はこれを理想賃料と呼んでいました)で募集し、利回り計算するなどやりたい放題でした。そこにはもちろん舶来のノンリコースローンといって、新手の手法が持ち込まれました。
そして6が来て、だんだんまずくなっているのですが、7は最大で半年位前の地価を天下のNHKが報道するものなので、先程のまずい状況に気が付いている人(業者)は、最後に誰かに「ババ」を引いてもらうでのです。
この状況に気が付かなかった人や売りそびれた人が、その後しばらく物件を抱え込むか、安値売りして損失を抱えこむことになります。
8については、ほぼ不動産に特化した貸し出しをしていたある銀行は、今後一切貸し出しはしないとわざわざ営業マンが来て説明しました。私はそれでは御行はどうするのかを聞いたところ、何もしないで台風が過ぎるのを待つとのこと。まさか本当に何もしないわけではないでしょうが、不動産に融資して焦げ付くより何もしないほうがダメージを受けないと判断したのでしょう。
我々は世界の大きな経済について本当に詳しくわかろうとしても難しいですが、不動産価格に関する大きな波はこのような状況でおおまかに見えてくると思うのです。
そして震災後の今、銀行や物件の売主の腰が引けているこの時期こそ絶好のチャンスと考えます。
銀行がだれでも貸すようになったらそれでは遅いのです。
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