不動産価格の実証分析 - 不動産投資・物件管理全般 - 専門家プロファイル

巻口 成憲
リズム株式会社 専務取締役
東京都
不動産投資アドバイザー

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対象:不動産投資・物件管理

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不動産価格の実証分析

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今回は不動産価格の算定の考え方について整理してみます。不動産価格評価法

は取引事例法や収益還元法などいくつかのやり方がありますが、今回はマーケット

から算出する実証分析的なやり方を検討してみます。

まず中古不動産に関しての価格算定モデルを下記のように仮説として設定します。

 

・価格算定モデル式

     不動産価格 = 本来価格※ + マクロ環境調整
     (取引価格)

     ※本来価格 = 立地・性能ポテンシャル価格 - 経年減価

 

立地性能ポテンシャル価格とは床面積、駅からの距離、駅の商業力等々のそもそも

その不動産がどの程度の価格ポテンシャルを持っているかから導き出される価格で

す。市場データより価格に影響を与えるファクターを抽出し、回帰分析という手法を

つかうことで、それぞれのファクターの感応度を算出することが可能となります。そこ

から経年による性能劣化を減価したものが本来的な物件の価格となるはずです。

ただし、不動産は景気に価格が左右される性質を持っています。その性質によって

インフレに対応できたり、キャピタルゲインを期待できたりするわけですが、必ずしも

「本来価格」で取引きされるとは限らないということです。そうしたマクロ的な環境の

影響を加味したものが実際の「取引価格」となります。

「取引価格」の算出の手順などからポイント簡単に解説してみましょう。

グラフ1は世田谷弦巻のあるマンションの新築当時から15年間の取引事例を調査

し、価格の推移をグラフ化したものです。部屋によって広さが異なるため平米単価で

分析しています。最小二乗法による近似曲線を分析することで、このマンションの

本来価格の中心値がおおよそ捕捉できます。

数式からは、このマンションの立地・性能ポテンシャル価格は、平米あたり875,169円

であることがわかります。近似曲線は単純な一次方程式ですので、xの傾きである

12,553円が築年に応じた価格の下落割合ということになります。

つまり弦巻A物件の70平米タイプの部屋の場合、築10年経過したタイミングでの相場

価格は以下の数式で推計することが可能ということです。

      (立地・性能ポテンシャル価格 -   経年減価  ) 

  (     875,169円    - 12,553円×10年 )×70平米

                     = 52,474,730円

およそ5200万円という相場価格が求められました。これがこの物件の算出された

理論取引価格です。調査物件と比べて標準的な仕様や管理状況であればこの価格

帯での取引が妥当だということです。上記のグラフは実際の取引事実をベースに計

算しているため、マクロ環境の影響要因が付加された状態の価格となっています。

不動産の価格に影響を及ぼすもう一つの要素であるマクロ環境は、たとえば公示

地価の変化などから推測することが可能です。将来予測をする場合にはマクロ環境

の調整前の数式を求めた上でマクロ環境による調整を行う必要があります。当該地

域の1995年を起点とした地価の累積変動率を国土交通省の地価公示推移より抽

出し、累積変動率をグラフに適用した結果がグラフ2です。

これが、地価の変動というマクロ環境がなかった場合の当該物件の本来の理論価格

グラフとなります。マクロ補正済のグラフで先ほどの条件の物件価格を算出した場合

は以下のようになります。

      (立地・性能ポテンシャル価格 -   経年減価  ) 

  (     1,027,015円    - 15,393円×10年 )×70平米

                     = 61,115,950円

バブル崩壊後の緩やかな地価下落の影響がなかった場合における理論価格がこれで

算出できたことになります。式1の本来価格にあたる数値がこの6111万円ということに

なります。

 今回ご紹介した計算方法は簡易的な算出方法にすぎません。ただ、一般的な業者

では、こういったアプローチで市場分析をしている事業者はまれでしょう。経験的に

だいたいこれくらいという相場感覚で取引をしているのが通例といえます。幸い今は

インターネットによってさまざまな情報を入手しやすくなっています。そのため、集めた

データを適正なアプローチで分析することで、ある程度プロの不動産業者の経験に

近い予測を行うことが可能になっています。経験的な理解もたしかに重要ですが、

こうした実証的なアプローチでマーケットを補足していく努力や工夫が不動産事業者

には必要とされているのではないでしょうか。

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