サラリーマンなら会社不満の一つや二つは必ずあるはずです。ただその不満の原因が、実は誤解に基づくものだった、などという事が意外に多くあります。もちろん、すべてがすべて誤解だったという事は少ないかもしれませんが、話に尾ひれがついていたり、勝手な想像だったりということは、結構あるものです。
私が社員ヒアリングなどを通じて聞いたことがある話をいくつか紹介すると、ある会社で給与不満を持っている社員さんがいらっしゃったのですが、その方がおっしゃるには、「銀行へ用事で行くと、いつも“御社は業績が安定して良い会社ですね”と言われるけど、自分の給料は上がらない。きっと会社がケチっているからに違いない」のだそうです。言いがかりに近い気がしますが、その会社は当時、評価制度や給与決定の仕組みができておらず、給与はそれなりに評価した上で決めていたものの、社員にはそれを知るすべがなかったために、そんな子供っぽい不満になっていたようです。
またある会社では、「業績が厳しいというのに、役員クラスの無駄遣いがひどい」とおっしゃいます。役員の方に状況を聞いてみると、「受注が厳しいので、既存顧客との関係強化策として、顧客と会う回数や量を増やしていて、当然接待などの付き合いも増えているので、社員からはそう見えてしまったかもしれない」とのことでした。なるほど社員から見れば、業績不振なのにせっせと会社の金で飲みに行く、不届きな役員たちに見えていたという事です。
どちらも間違いなく誤解といって良いと思いますが、誤解を招いた原因は会社側にもあります。状況を断片的にしか、もしくはまったく知らせていないというところです。
前者のケースでいえば、今がどんな業績で、会社全体はどんな給与水準で、その人はどんな評価をされてその給与に決まったかということ、後者のケースでは、やはり今の業績と、その改善施策としてどんなことをやろうとしているのかということになります。
視野を広く持てとはいうものの、人間はどうしても自分が見える範囲内の事で判断しがちになります。
その結果、勝手に誤解して、勝手にモチベーションを下げているとしたら、会社にとっても社員にとっても、こんなにもったいないことはありません。
「会社は社員が適切な状況判断ができるように情報提供し、社員は会社全体を正しく見通せる視野を持つように努力する。」
お互いの歩み寄りで、防ぐことができるモチベーション低下もあると思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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