冷房のない教室での講義で気がついた・・・ - 法人税 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
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冷房のない教室での講義で気がついた・・・

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発表 実務に役立つ判例紹介

東日本大震災の影響から開講が遅れていた国士舘大学もようやく9日から

講義が始ました。ただ、原発事故の影響から、講義教室に冷房が入らない

“蒸し風呂”状態での講義には、受講する学生もかなりきつそうです。

昨日、一昨日、冷房を使えず蒸し風呂状態の教室で汗だくで講義をして、

正直、倒れるかも・・・と感じましたね。

 

今回の震災の被害を拡大させた津波の影響を考慮し、政府は浜岡原発の

運用停止を求めました。スポークスマンとして獅子奮迅の働きを示した

枝野官房長官がかねてからの原発廃止論者であったことは皮肉でしょうが、

これから夏に向けての電力需要への対応が危惧されます。

政府は一度廃炉にした火力発電所の再稼動の可能性を探っています。

逼迫する電力事情を考えれば、英断と評価したいですが、東京地裁

平成19年1月31日判決(税資257-14、TAINSコードZ257-10623)を

考えると、その判断基準の変更につながることに、税務実務への悪影響を

危惧せざるを得ません。

 

電気事業者が、その保有する火力発電設備について、電気事業法等に基づく

廃止のための手続を執った上で、各発電設備ごとに一括してその設備全部

につき、いわゆる有姿除却(対象となる固定資産が物理的に廃棄されていない

状態で税務上除却処理をすること)に係る除却損を計上し、これを損金の額に

算入して確定申告をしたところ、各発電設備を構成する個々の資産のすべてが

固定資産としての使用価値を失ったことが客観的に明らかではなく、

今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないとは認められない

などとして、損金算入を否定された事件です。

 

東京地裁は、多大な費用と時間をかけて本件火力発電設備を再稼働させたと

しても、低効率で経済性が劣る経年火力発電設備が再稼働されるにすぎない

から、社会通念上、原告会社がそのような選択をしないことが明らかである

こと及び同業他社においても廃止後に再稼働された火力発電設備はないこと

などに照らすと、本件火力発電設備はその廃止により発電機能を二度と

果たすことがなくなり、同設備を構成する電気事業固定資産の「既存の

施設場所」における「固有の用途」も完全に失われたことになるから、

除却の要件が充足され、有姿除却が認められるべきである、と判示しました。

 

つまり、廃炉したら再稼動する選択をするはずもなく、再稼動の実績もない

ということから有姿除却を認めているのであって、今回の再稼動により

裁判所の判断基準に変更が加えられるため、再使用の可能性が残っている

固定資産の有姿除却は認められない、とする課税庁の主張に正当性が

認められる可能性があります。

 

おそらく東電は、福島第一原発を有姿除却するでしょう。というよりも、

除却することを会計士に求められることになるはずです。しかし、税務署は

この処理を否認するでしょうから、この点を巡って裁判になるでしょう。

そうすると、判断基準が変わってしまったから除却処理は否認されるべき

ですが、社会からの廃炉要求が廃炉せざるを得ない状況を作ったとして、

除却を容認するという興銀事件と同様の論理構成で判決が下されるでしょう。

もしそうなると、判例による有姿除却の判断基準は、再使用の可能性が

完全にないか、社会的要請による場合にしか認められなくなってしまいます。

 

皆さんのところでは、まだ廃棄していないけれども除却処理は終わっている

という固定資産はありませんか?

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