【聴心記「心の炎」】第10回 感情と評価(1) - 心の病気・カウンセリング - 専門家プロファイル

国府谷 明彦
カウンセリングセンター聴心館 聴心館館長
東京都
厚生労働省認定 産業カウンセラー

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閲覧数順 2024年04月26日更新

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【聴心記「心の炎」】第10回 感情と評価(1)

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【聴心記「心の炎」】第10回 感情と評価(1)

あっという間に半月が過ぎてしまいました。さてさて,「心の炎」の続きに入りましょう。前回まで,
「感情と思考」ということで,思考と感情の悪循環のお話をしてきました。今回から,「心の炎」が揺れ動きやすい話をしていきましょう。

あなたが,ナーバスになる時ってどんな時でしょうか? 多くの場合,「自分が人からどんな風に見られているか」というときではありませんか? どう見られているか気になって,自信がなくなる。心の炎が揺れ動き,だんだん小さくなっていく。 どうでしょうか? ちなみに,心の炎というのは,あなたの魂のようなもので,小さくなっても決して消えてなくなったりはしませんから,そこんところは,しっかり「大丈夫」と感じて下さいね。

「人からどう思われるか?」 これは,かなり大きな問題です。誰もが多かれ少なかれ気にしている。いやでも気になるという方が合っているかもしれませんね。「人からどう思われているか」 これは,公的なものであれば企業の「人事評価」や採用面接での「人物評価」だったりします。また,個人的なものならば,「あの人はこんな人」といった評判や風評ということになります。こうした,評判や風評まで含めて,ここでは「評価」と呼ぶことにしましょう。こうした評価と感情は深く結びついています。これに,メスを入れていきましょう。最初は,感情のことをちょっと脇に置いて,評価と言うことを純粋客観に考えていきましょう。

「あの人はドジな人」という評判や評価がでることがあります。この評価はどうやって生まれてくるのでしょうか。「ドジ検査」なんていうのがあって,そこで80点以上なら晴れて「ドジ」として評価されるという訳ではありませんよね。「なにかドジなことをした」あるいは「ドジなことが数回続いた」ということで,その評価が下されていることが多いと思います。

たとえば,雨上がりの交差点で車いすの人が車道から歩道に上がろうとしていた。Mさんが,手伝ってあげようとして,車いすをゆっくり押し上げた瞬間,自分が体勢を崩してすべって転んだ。あいにくの雨上がりで,洋服はびしょびしょなんてことがあります。そのまま,次の行き先に行ったところ,ずぶ濡れのMさんを見て,周りの人が話も聴かずに「Mさんはドジな人」と評価した。

さあ,どうでしょう。このときの評価は,冷静客観的なものなのでしょうか? 非常に一面的なものですよね。ずぶ濡れのMさんを見ただけでの評価ということになります。あるいは日頃,目にしているMさんへの思いがあっての評価かもしれません。でもそれも,普段その場で見ているMさんが評価の対象ですね。

実際には,Mさんには会社や学校で見せている姿があります。家庭で見せている姿もあります。ひとり個室で見せる姿もあります。個室だから,見せる姿というより有り様(ありよう)と言うべきですかね。昔の友人に見せる姿,趣味の教室で見せる姿,あるいは心の中でひっそりと感じていること,頭の中で密かに思っていること,いろんな姿のMさんがいます。

こうしてみると,Mさんに対する評価はひとつの切り口でしかない。カメラのワンショットで判断しているのにすぎないのです。車いすの人を手伝っていたという情報で評価が変わるでしょう。その時,実はMさんが心中で「手伝えば自分の株が上がる」と計算ずくでやっていたことが明白になれば,また評価が変わるでしょう。

リンゴを評価するのに,その切り口をみて評価しているようなものなのです。医学的にCTやMRIのように輪切りのデータをかき集めてくれば,リンゴの実体像が見えるかもしれません。しかし,人の頭や心はそんな風にして評価や評判を作っている訳ではありません。切り口から連想して,経験値を加えて評価している。
その評価がすべてではないし,完全絶対な評価は存在しないのです。 

ということは,「その切り口で判断すれば,そういう評価になる」と思えば良いのですね。「リンゴには赤い皮がある」ということです。それもあながち間違いではないというレベルの話。実際には,赤い皮もあれば緑の時もある。黄色いリンゴもあります。それに,中には黄色い中身もあれば,芯も種もある。そうした中の「赤い皮」と言う評価です。

「あなたは嘘つき」と言われたとしましょう。お世辞や相手を思いやる嘘も世の中にはあります。全部をひっくるめて,嘘をつかない人がこの世にあるのでしょうか。また,事実と違うことがすべて嘘になるなら,真実だけを言うことはとても難しいことになる。そんな風に考えると「嘘つき」の評価・評判にどんな意味があるのでしょうか。評価とは,そうした性質のものです。いいかえるならば,評価とはそれをした人の価値判断・価値観と言えます。

人事評価は会社としての価値判断。あなたの人格判断ではないのです。その会社で仕事をする上での評価・判断なのです。その会社に所属する以上は,その判断に従わなければならない。でも,全人格を評価されている訳ではないことを覚えておきましょう。そこがリンゴの切り口です。

それでは,そうした評価が感情にどうかかわってくるのか,それを次回に考えていくことにしましょう。

【2012.5.2: 聴心記「心の炎」は不定期で展開します】

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