旧商法下でのDESについて債権者側の税務の裁判例 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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旧商法下でのDESについて債権者側の税務の裁判例

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債務整理

(3)旧商法下でのDESについての税務の裁判例

 また, 原告が,関連会社への債権の現物出資および同社への新株発行による同社に対する債務の株式への転化(DES)について混同による債務消滅益の計上漏れがあるなどとして,本件更正処分等を受けたことから,その取消を求めた事案で,平成13年商法改正前において,株式会社の債務を株式に直接転換してDESを直接実現する制度が存在しない以上,株式会社の債務を株式に転化するDESを実現するためには,既存の法制度を利用するほかなく,既存の法制度を利用する以上,既存の法制度を規律する関係法令の適用を受けることは当然の事理であって,当事者の意思としても,(ⅰ)現物出資,(ⅱ)混同,(ⅲ)新株発行という既存の法制度を利用することは所与の前提として認識しており,DESを現物出資・混同による消滅および新株発行という各段階の過程で構成される複合的な行為と捉えることが,当事者の合理的な意思に反するものとはいえないなどとして,請求を棄却した事例があります(東京地判平成21・4・28 公刊物未登載)。

 この判決では,以下の通り判示しています。

「原告は,本件DESは,一の取引行為であり,全体として法人税法22条5項の資本等取引(資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引)に該当する旨主張する。しかしながら,上記アで述べたとおり,株式会社の債務を株式に直接転換する制度が存在しない以上,本件DESは,現行法制上,〔1〕本件現物出資による○○(債権者)から原告への本件貸付債権の移転,〔2〕本件貸付債権とこれに対応する債務(以下「本件貸付債務」という。)の混同による消滅,〔3〕本件新株発行及び原告の新株引受けという複数の各段階の過程によって構成される複合的な行為であるから,これらをもって一の取引行為とみることはできない。また,上記〔1〕の現物出資及び同〔3〕の新株発行の過程においては,資本等の金額の増減があるので,これらは資本等取引に当たると認められるものの,上記〔2〕の混同の過程においては,資本等の金額の増減は発生しないので,資本等取引に該当するとは認められないから,〔1〕ないし〔3〕の異なる過程を併せて全体を資本等取引に該当するものということはできず,いずれにしても,上記主張は理由がない。」「平成18年5月1日に施行された会社法は,債務者会社の負債の帳簿価額を超えない限り,券面額で行う現物出資について検査役の選任を不要とし(会社法199条1項3号,207条9項5号),DESに係る現物出資に関する東京地裁商事部の従前の取扱いを踏まえつつ,さらに一層の手続の合理化を定めていることからすれば,会社法及びその制定に伴う法人税法の改正は,DESに係る現物出資対象債権の評価について,従来は両法制の関係を含めて解釈上の疑義があったことを前提とした上で,会社法制上の手続においては券面額によることを,税法上の法人税の課税においては評価額によることをそれぞれ明らかにすることによって,券面額と評価額の議論について立法的解決を図ったものとみることができる。」

 「法人税法22条2項の規定の性質上,同項の『資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受け』は『取引』の例示であり,同項の『その他の取引』には,民商法上の取引に限られず,債権の増加又は債務の減少など法人の収益の発生事由として簿記に反映されるものである限り,人の精神作用を要件としない法律事実である混同等の事実も含まれると解するのが相当である。したがって,混同により消滅した本件貸付債務の券面額から上記資本等取引に当たる1億5200万円を控除した残額は,損益取引により生じた益金と認められる」

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