事業承継と持株比率変更のための各方法の比較 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年10月21日更新

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事業承継と持株比率変更のための各方法の比較

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【持株比率変更のための各方法の比較】

 現経営者または後継者の持株比率を上昇させるための方法として考えられるものは,募集株式の発行等および新株予約権の発行,株式併合,単元株の導入,自己株式の取得,他の株主が有する株式の議決権制限株式への変更,属人的種類株式の導入といったものがあります。

(ⅰ)募集株式の発行等および新株予約権の発行

 現経営者や後継者など持株比率を高めたい者に対して,募集株式の発行等および新株予約権の発行を行うことが最も原始的な持株比率上昇の方法といえます。なお,新株予約権発行後の持ち株比率を変更させないようにするため,新株予約権の内容として(会社法236条1項6号),譲渡制限をつける必要があります。

ア メリット

 公開会社では,特に有利な金額で払込みをさせる場合等を除き,取締役会の決議によって募集株式の発行等を行うことが可能です。また,非公開会社であっても,株主割当ての方法による場合で,かつ,定款に定めがあれば,取締役の決定又は取締役会の決議により,これを行うことができます。

 新株予約権者は,新株予約権の行使期間内であれば,いつでも新株予約権を行使して,株式を取得することができます。

 イ デメリット

 持ち株比率を高めようとする現経営者や後継者には,一定の資金が必要になります。

 ただし,新株予約権は無償で発行することが可能ですから,新株予約権の付与を受ける段階では,現経営者や後継者に一定の資金の準備は不要になります。新株予約権の行使時に,現経営者や後継者には,一定の資金(払込金,新株予約権の行使価額と時価との差額は給与所得とされるので所得税の納税資金等)が必要になります。

(ⅱ)株式併合

ア メリット

株主総会の特別決議以外に特別の手続がありません。

イ デメリット

 取締役は,株主総会において,株式の併合を必要とする理由を説明しなければ

なりません(会社法180条3項)。

併合後の1株が極端に大きいため,一部の大株主を除き大部分の株主が端株主になってしまうような場合には,株主平等原則の違反が生じ得ます(江頭憲治郎『株式会社法 第3版』128頁)。

少数派の株式を端数にして会社経営から追い出す目的で利用された場合,多数派が特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議として,決議が取り消される(会社法831条1項3号)おそれがあります(江頭憲治郎『株式会社法 第3版』267頁)。

(ⅲ)単元株の導入

ア メリット

 単元未満株主も,議決権および議決権の存在を前提とする権利(会社法303条等)を除いて,すべての権利を有するのが原則ですから,少数株主からの抵抗は少ないと思われます。また,会社としても定款で株主権の行使を制限することができますから(例えば,株主代表訴訟の提起を制限することができます。会社法847条1項参照),少数株主と会社側の利益の調和を図ることもできます。

イ デメリット

単元株式数を定める場合には,取締役は,株主総会において,当該単元株式数を定めることを必要とする説明をしなければなりません(会社法190条)

種類株式発行会社において,定款変更によりある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがある場合には,反対する種類株主から株式買取請求が行われる場合があります(会社法116条1項3号ハ)。

 単元未満株主から会社に対して,単元未満株式の買取請求が行われる場合があります(会社法192条)。なお,この行使は定款によっても排除することができません(会社法189条2項4号)

(ⅳ)自己株式の取得

ア メリット

 会社は,自己株式の取得後,これを処分することもできます。

 様々な方法を選択することができますが,特に,株主全員から申込みを受ける場合には,株主総会の普通決議により,会社は株式を取得することができます。 

イ デメリット

例えば,1/3超の議決権を有するような比較的株式を多く保有している少数株主から,株式を取得できなければ,自己株式は議決権を有しないため(会社法308条2項),自己株式の取得のみでは,かかる少数株主の議決権割合も増加してしまい,少数株主の力を強めてしまうことになります。

(ⅴ)他の株主が有する株式の議決権制限株式への変更

既存株主が所有する株式を譲渡制限株式に変更するためには,種類株式発行会社では,定款変更のための株主総会特別決議が必要になります(会社法108条2項3号,会社法466条,会社法309条2項11号)。そして,定款変更によりある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがある場合には,その種類株主総会の特別決議が必要になります(会社法322条1項1号ロ,会社法324条2項4号)。

 種類株式発行会社でない会社が既存株式の一部に譲渡制限を付する方法については,前述の【コラム】普通株式の一部を議決権制限株式化する方法を参照ください。

ア メリット

 既存株式の内容を変更することになるため,資金的な負担がありません。

イ デメリット

 配当優先株としたり,取得請求権をつけたりしなければ,議決権制限株式に内容を変更される種類株主にとって不利益なので,当該種類株主総会の特別決議の可決は難しいと思われます。

(ⅵ)属人的種類株式の導入

非公開会社では,株主総会における議決権(会社法105条1項3号)について,株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(会社法109条2項)。定款変更のための決議は,特殊決議となります(会社法309条4項)。具体的には,総株主の半数以上で総株主の議決権の4分の3以上の多数の賛成が必要になります。

ア メリット

定款の定める内容を自由に決めることが可能です。例えば,現経営者は1株あたり10の議決権を有する,後継者は所有する株式の議決権に加えて100の議決権を

有する,代表取締役は2倍の議決権を有する等,様々なものが考えられます。

イ デメリット

 非公開会社でのみ利用することが可能です。

 オーナー社長が健在のうちは導入できる場合も多いでしょうが,相続発生後は複数の相続人がいる場合,後継者とその他の相続人との利害が対立するので,定款変更のための特殊決議のハードルをクリアすることが困難であると思われます。

 

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