- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
- (弁護士)
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(ⅰ)中小企業金融円滑化法の概要 中小企業金融円滑化法は,最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ,金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ,中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより,中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的として立法されました(中小企業金融円滑化法1条)。 中小企業金融円滑化法は平成21年12月4日から施行されていますが平成23年3月31日限り,その効力を失います。ただし,同日までに行われた第4条第1項に規定する申込み,同条第2項に規定する確認及び同条第3項に規定する求め並びに第5条第1項に規定する申込みに係る事案については,同日後もなおその効力を有するとされます(中小企業金融円滑化法附則2条1項)。 同法は時限立法ですが,条件変更等の申出が平成23年3月末日までに行われていればよく,また逆に金融機関が返済猶予等をする期限が同日までというわけではありません。 中小企業金融円滑化法の失効前にした行為に対する罰則の適用については,中小企業金融円滑化法は,前項の規定にかかわらず,同項に規定する日後も,なおその効力を有するとされます(同条2項)。 前2項に規定するもののほか,中小企業金融円滑化法の失効に伴い必要な経過措置は,政令で定められます(同条3項)。 中小企業金融円滑化法の概要は,以下の通りです。
中小企業金融円滑化法において「金融機関」とは,次に掲げる者をいいます(中小企業金融円滑化法2条1項)。金融機関のうち,中小企業金融円滑化法の施行地外に本店を有するものは除かれます(中小企業金融円滑化法2条1項かっこ書)。 すなわち,中小企業債務円滑化法は日本国内に本店がある金融機関が対象とされており,外国の金融機関は対象外とされています。
中小企業金融円滑化法(第4条を除く。)において「中小企業者」とは,次に掲げる者をいいます(中小企業金融円滑化法2条2項)。
※一般事業とは,金融業その他の政令で定める業種(施行令2条1項で定める金融・保険業(保険媒介代理業及び保険サービス業を除く。))に属する事業以外の事業をいいます。ただし,保険媒介代理業及び保険サービス業は一般事業に含まれます。 中小企業金融円滑化法において「住宅資金借入者」とは,住宅資金としての住宅の建設若しくは購入のための資金(当該住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金を含む。)又は持家である住宅の改良のための資金をいいます。)の貸付けを受けている者をいいます(中小企業金融円滑化法2条3項)。 住宅資金とは,持家としての住宅の建設・購入のための資金(当該住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金を含む。)又は持家である住宅の改良のための資金をいいます。すなわち,住宅(住宅用の宅地または借地権が含む。)の建設・購入,改良が対象となっています。 持家とは,自ら居住するため所有する住宅をいいます。したがって,別荘や投資用のマンションや賃貸用アパートなどのローンは対象外です。 中小企業金融円滑化法における行政庁は,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に定める者とされます(中小企業金融円滑化法第13条1項)。
(ⅱ)①円滑な中小企業金融 金融機関は,中小企業者に対する信用供与については,当該中小企業者の特性及びその事業の状況を勘案しつつ,「できる限り,柔軟にこれを行うよう努めるものとする」(中小企業金融円滑化法第3条)とされていますから,金融機関にとっては法的義務ではなく,努力義務です。
(ⅲ)②貸付条件の変更等 ア 中小企業者から事業資金の債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合等における金融機関の対応 金融機関は,当該金融機関に対して事業資金の貸付け(以下,単に「貸付け」といいます。)に係る債務を有する中小企業者(第2条第2項に規定する中小企業者であって,※次の各号のいずれにも該当しないものをいいます。)であって,当該債務の弁済に支障を生じており,又は生ずるおそれがあるものから当該債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合には,当該中小企業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ,できる限り,当該貸付けの条件の変更,旧債の借換え,当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするものその他の当該債務の弁済に係る負担の軽減に資する措置をとるよう努めるものとするとされています(中小企業金融円滑化法第4条1項)。 金融機関の取る対応
「できる限り,・・・努めるものとする」という条文からして,金融機関が返済猶予を必ず行わなければならないモラトリアム法ではなく,努力義務を定めたものと解されます。 貸付条件変更等については,「当該中小企業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ」と規定されています。 したがって,改善又は再生の可能性もない場合には,条件変更等に金融機関が応じなくてもよいと考えられます。そうすると,債務者側にとっては,事業の改善・再生の可能性を具体的に数字や方策を経営再建計画に盛り込んで金融機関に申し込むことがポイントと考えられます。 「貸付条件の変更」としては,貸付元本の弁済猶予や弁済期限の延長,弁済額の軽減・免除,金利負担の減免などの弁済条件の変更,弁済期限の到来した貸付の借換えなどが考えられます(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律に基づく金融監督に関する指針Ⅱ-1-1(2))。 例えば,毎月元利返済の約定を元本の返済を猶予し毎月利息のみ支払う条件に変更するなどといったことが考えられます。 また,返済充当の順序の変更,例えば,遅延損害金,利息,元本の順に返済を充当するのが通常ですが,債務者に有利になるように,まず元本から充当していくといったことが考えられます。 「当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするもの」は,債務の株式化(DEBT EQUITY SWAP)をさします。 債務を返済できないので,株式に振り替えることによって,負債を減らし,破錠の危機に瀕した企業の救済のために使われます。 債務者の貸借対照表上では,負債の部の借入金が減少し,資本の部の資本金が増加します。 会社法では,弁済期の到来した借入金のデット・エクイティ・スワップは,検査役の検査を不要とし,かつ,現物出資の評価証明制度の対象外としています(会社法207条9項5号,284条9項5号)。ただし,弁済期の到来していない借入金については弁護士等の評価証明が必要です(会社法207条9項4号,284条9項4号)。 DESについては●第○部会社法編第○章○で詳述しています。
※次の各号のいずれにも該当しないもの
※1 政令(施行令第3条1項)で定める特殊の関係のある者は,次に掲げる者です。
(注1)施行令第3条1項に規定する「親会社等」とは,他の法人の財務及び事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいいます。以下,施行令第3条2項及び施行令4条第2項において「意思決定機関」といいます。)を支配している法人として主務省令で定めるものをいいます(施行令3条2項前段)。 (注2)施行令第3条1項に規定する「子会社等」とは,親会社等によりその意思決定機関を支配されている他の法人をいいます。この場合において,親会社等及び子会社等又は子会社等が他の法人の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人は,その親会社等の子会社等とみなされます(施行令3条2項後段)。 (注3)施行令3条第1項に規定する「関連会社等」とは,法人(当該法人の子会社等(施行令第3条2項に規定する子会社等をいいます。以下施行令第3条3項において同じ。)を含む。)が,出資,取締役その他これに準ずる役職への当該法人の役員若しくは使用人である者又はこれらであった者の就任,融資,債務の保証,担保の提供,技術の提供,事業上の取引等を通じて,財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる他の法人(子会社等を除く。)として主務省令で定めるものをいいます(施行令3条3項)。
※2 政令(施行令第4条1項)で定める特殊の関係のある者は,次に掲げる者です。
(注1)施行令4条1項に規定する「子会社等」とは,大会社によりその意思決定機関を支配されている他の法人として主務省令で定めるものをいいます。この場合において,大会社及び子会社等又は子会社等が,他の法人の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人は,その大会社の子会社等とみなされます(施行令4条2項)。 (注2)施行令4条1項に規定する「関連会社等」とは,法人(当該法人の子会社等(前項に規定する子会社等をいいます。以下施行令4条3項において同じ。)を含む。)が,出資,取締役その他これに準ずる役職への当該法人の役員若しくは使用人である者又はこれらであった者の就任,融資,債務の保証,担保の提供,技術の提供,事業上の取引等を通じて,財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる他の法人(子会社等を除く。)として主務省令で定めるものをいいます。(施行令4条3項)。
イ 住宅資金借入者から債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合における対応 金融機関は,当該金融機関に対して住宅資金の貸付けに係る債務を有する住宅資金借入者であって,当該債務の弁済に支障を生じており,又は生ずるおそれがあるものから当該債務の弁済に係る負担の軽減の申込みがあった場合には,当該住宅資金借入者の財産及び収入の状況を勘案しつつ,できる限り,当該貸付けの条件の変更,旧債の借換えその他の当該債務の弁済に係る負担の軽減に資する措置をとるよう努めるものとするとされています(中小企業金融円滑化法第5条1項)。 この条項も金融機関にとっては努力義務を定めたものです。「当該住宅資金借入者の財産及び収入の状況を勘案しつつ」と規定されていますが,住宅ローン以外の借入金の返済など,住宅資金借入者の家計の状況を当然,考慮すべきと解されます。 なお,住宅資金借入者は,個人の居住用の住宅ローンが対象となっているので,会社を対象とするDESは規定されていません(中小企業金融円滑化法5条1項)。 金融機関は,中小企業金融円滑化法5条1項の場合において,同項に規定する申込みをした住宅資金借入者に対して住宅資金の貸付けに係る債権を有する他の金融機関,独立行政法人住宅金融支援機構その他これらに類する者として主務省令で定めるものがいるときは,その者との緊密な連携を図るよう努めるものとされています(中小企業金融円滑化法5条2項)。この規定も金融機関の努力義務です。
(ⅳ)③他機関との協力・連携 ア 特定認証紛争解決手続の実施の依頼 金融機関は,中小企業者から特定認証紛争解決手続(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(以下,産業再生法といいます。)第2条第26項 に規定する特定認証紛争解決手続をいいます。以下,中小企業金融円滑化法4条2項において同じ。)の実施の依頼を受けた特定認証紛争解決事業者(産業再生法2条第25項 に規定する特定認証紛争解決事業者をいいます。)より当該特定認証紛争解決手続の実施を依頼するか否かの確認があった場合には,当該中小企業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ,できる限り,当該特定認証紛争解決手続の実施の依頼をするよう努めるものとされます(中小企業金融円滑化法4条2項)。 「特定認証紛争解決手続」とは,認証紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下,ADR法といいます。)第2条第3号に規定する手続をいいます。)であって,特定認証紛争解決事業者が事業再生に係る紛争について行うものをいいます。(産業再生法2条26項)。 民間紛争解決手続とは,民間事業者が,紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について,紛争の当事者双方からの依頼を受け,当該紛争の当事者との間の契約に基づき,和解の仲介を行う裁判外紛争解決手続をいいます。ただし,法律の規定により指定を受けた者が当該法律の規定による紛争の解決の業務として行う裁判外紛争解決手続で政令で定めるものを除きます(ADR法第2条1号) 民間紛争解決手続を業として行う者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)は,その業務について,法務大臣の認証を受けることができ(ADR法第5条),法務大臣の認証を受けた業務として行う民間紛争解決手続を「認証紛争解決手続」といいます(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律第2条3号)。また,法務大臣の認証を受け,認証紛争解決手続の業務を行う者を「認証紛争解決事業者」といいます(ADR法2条4号)。 「特定認証紛争解決事業者」とは,認証紛争解決事業者(ADR法第2条第4号に規定する者をいいます。第48条において同じ。)であって,同条第1項の規定により認定を受けたものをいいます(産業再生法2条25項)。 イ 企業再生支援機構による債権買取 金融機関は,中小企業者であって株式会社企業再生支援機構法第26条第1項 に規定する対象事業者であるもの(以下この項において「対象事業者」といいます。)に対して有する債権について,株式会社企業再生支援機構から同条第1項 の規定により同項 に規定する買取申込み等の求めがあった場合には,当該対象事業者の事業についての改善又は再生の可能性その他の状況を勘案しつつ,できる限り,これに応ずるよう努めるものとされます(中小企業金融円滑化法4条3項)。 株式会社企業再生支援機構法第26条1項 は以下のとおり規定しています。 株式会社企業再生支援機構は,支援決定を行ったときは,直ちに,その対象となった事業者(以下「対象事業者」といいます。)の債権者である金融機関等のうち事業再生計画に基づく対象事業者の事業の再生のために協力を求める必要があると認められるもの(以下「関係金融機関等」といいます。)に対し,支援決定の日から起算して3月以内で機構が定める期間(以下「買取申込み等期間」といいます。)内に,当該関係金融機関等が対象事業者に対して有するすべての債権につき,次に掲げる申込み又は同意をする旨の回答(以下「買取申込み等」といいます。)をするように求めなければなりません。この場合において,関係金融機関等に対する求めは,支援決定を行った旨の通知及び事業再生計画を添付して行わなければなりません。 ① 債権の買取りの申込み ② 事業再生計画に従って債権の管理又は処分をすることの同意(対象事業者に対する貸付債権を信託財産とし,当該同意に係る事業再生計画に従ってその管理又は処分を機構に行わせるための信託の申込みを含む。) ウ 金融機関が緊密な連携を図るべき者 金融機関は,中小企業金融円滑化法4条1項から3項の場合において,次に掲げる者がいるときは,その者との緊密な連携を図るよう努めるものとされています(中小企業金融円滑化法4条4項)。 ① 中小企業金融円滑化法4条第1項に規定する申込み,第2項に規定する確認又は3項に規定する求め(以下,「申込み等」と総称する。)に係る中小企業者に対して貸付けに係る債権を有する他の金融機関,株式会社日本政策金融公庫その他これらに類する者として主務省令で定めるもの ② 申込み等に係る中小企業者が当該金融機関に対して有する貸付けに係る債務の保証をしている信用保証協会その他これに類する者として主務省令で定めるもの ③ 申込み等に係る中小企業者に関する中小企業再生支援業務(産業再生法第41条第1項 に規定する中小企業再生支援業務をいいます。)を行っている認定支援機関(同条第2項 に規定する認定支援機関をいいます。) 産業再生法第41条1項は以下のとおり規定しています。 経済産業大臣は,中小企業再生支援指針に基づき,経済産業省令で定めるところにより,商工会,都道府県商工会連合会,商工会議所又は中小企業支援法第7条第1項に規定する指定法人であって,都道府県の区域の全部又は一部の地域において次項に規定する業務(以下「中小企業再生支援業務」といいます。)を適正かつ確実に行うことができると認められるものを,その申請により,中小企業再生支援業務を行う者として認定することができます。 産業再生法41条2項は以下のとおり規定しています。 同条1項の認定を受けた者(以下「認定支援機関」といいます。)は,他の法令に定めるもののほか,当該認定に係る産業再生法41条第4項第4号ハの地域において,次の業務を行うものとされています。 ① 次に掲げるもののいずれかを行い,又は行おうとする中小企業者の求めに応じ,必要な指導又は助言を行うこと。 イ 事業再構築,経営資源再活用,経営資源融合,資源生産性革新又は経営資源活用新事業 ロ 中小企業承継事業再生その他の取組による事業の再生 ② 中小企業者及びその経営の改善を支援する事業を行う者並びにこれらの者の従業員に対し,前記①イ又はロに掲げるものに関する研修を行うこと。 ③ 前記①②に掲げる業務に関連して必要な情報の収集,調査及び研究を行い,並びにその成果を普及すること。 ④ 独立行政法人中小企業基盤整備機構からの委託に基づき,産業再生法第47条に規定する業務の実施に必要な調査を行うこと。 認定支援機関は,他の法令に定める業務及び前項各号に掲げる業務のほか,ADR法第5条の認証を受け,かつ,第48条第1項の認定を受けて,事業再生に係る紛争について民間紛争解決手続(同法第二条第1号に規定する手続をいいます。)を実施することができる(産業再生法41条3項)。
(ⅴ)金融機関の努力義務を担保する規定 ア 対応措置の実施に関する方針の策定等 金融機関は,中小企業金融円滑化法4条および5条の規定に基づく措置を円滑にとることができるよう,主務省令で定めるところにより,当該措置の実施に関する方針の策定,当該措置の状況を適切に把握するための体制の整備その他の必要な措置を講じなければなりません(中小企業金融円滑化法第6条)。 中小企業金融円滑化法4条および5条に定める返済条件の緩和等の対応措置は努力義務ですが,対応措置の実施に関する方針の策定等は努力義務ではなく,法的義務とされています。これによって対応措置が実効性があるものと企図したものと考えられます。 イ 対応措置等に関する説明書類の縦覧 金融機関は,6月を超えない範囲内で主務省令で定める期間ごとに,主務省令で定めるところにより,次に掲げる事項を記載した説明書類を作成し,当該金融機関の営業所又は事務所(無人の営業所又は事務所その他の主務省令で定める営業所又は事務所を除く。第3項において同じ。)に備え置き,公衆の縦覧に供しなければなりません(中小企業金融円滑化法第7条1項)。 ① 中小企業金融円滑化法第4条及び第5条の規定に基づいてとった措置の状況に関する事項として主務省令で定めるもの ② 中小企業金融円滑化法3条の規定に基づいてとった措置の概要に関する事項として主務省令で定めるもの ③ その他主務省令で定める事項 中小企業金融円滑化法7条1項に規定する説明書類は,電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものとして主務省令で定めるものをいいます。)をもって作成し(中小企業金融円滑化法7条2項),電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものをいいます。)により不特定多数の者が提供を受けることができる状態におく措置として主務省令で定めるものをとることができます(中小企業金融円滑化法7条3項)。 中小企業金融円滑化法4条および5条に定める返済条件の緩和等の対応措置は努力義務ですが,証明書類の縦覧は努力義務ではなく,法的義務とされています。これによって対応措置が実効性があるものと企図したものと考えられます。 ウ 行政庁への報告等 金融機関は,6月を超えない範囲内で主務省令で定める期間ごとに,主務省令で定めるところにより,中小企業金融円滑化法第4条から第6条までの規定に基づいてとった措置の詳細に関する事項として主務省令で定めるものを行政庁に報告しなければなりません(中小企業金融円滑化法第8条1項)。 都道府県知事は,中小企業金融円滑化法第8条1項の報告を受けたときは,当該報告に係る事項を内閣総理大臣及び農林水産大臣(施行令5条)に通知するものとする(中小企業金融円滑化法8条2項)。 内閣総理大臣は,おおむね6月に1回,中小企業金融円滑化法8条第1項の報告及び前項の通知を取りまとめ,その概要を公表するものとする(中小企業金融円滑化法8条3項)。 中小企業金融円滑化法4条および5条に定める返済条件の緩和等の対応措置は努力義務ですが,行政庁への報告は努力義務ではなく,義務とされています。これによって対応措置が実効性があるものと企図したものと考えられます。 エ 検査及び監督における中小企業債務円滑化法の趣旨の尊重 行政庁は,銀行法その他の政令(施行令第6条)で定める法律の規定による金融機関に対する検査及び監督の実施に当たり,中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図ることにより,中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期すとの中小企業債務円滑化法の趣旨を十分に尊重するものとする(中小企業金融円滑化法第9条)。これを受けて金融庁のマニュアルが作られています。 オ 金融機関による対応措置の実施に係る政府の責務 政府は,金融機関が業務の健全かつ適切な運営を確保しつつ,適切かつ円滑に第3条から第5条までの規定に基づく措置をとることができるよう,金融機能の強化のための特別措置に関する法律の適切な運用その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする(中小企業金融円滑化法第10条)。 カ 信用補完事業の充実のための措置等 政府は,中小企業者に対する金融機関の信用供与の円滑化を図るため,信用保証協会が行う中小企業者に関する信用補完事業の充実に係る財政上の措置を講ずるものとする(中小企業金融円滑化法第11条1項)。 政府は,信用保証協会における人的体制の整備その他中小企業者に関する信用補完事業の適切かつ円滑な実施のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする(中小企業金融円滑化法11条2項)。 キ 罰則 (ア)自然人についての罰則 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する(中小企業金融円滑化法第17条) ① 中小企業金融円滑化法第7条第1項の規定に違反して,同項に規定する説明書類を公衆の縦覧に供せず,若しくは同条第3項の規定に違反して,同項に規定する電磁的記録に記録された情報を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置として主務省令で定めるものをとらず,又はこれらの規定に違反して,同条第1項に規定する説明書類に記載すべき事項を記載せず,若しくは虚偽の記載をして,公衆の縦覧に供し,若しくは電磁的記録に記録すべき事項を記録せず,若しくは虚偽の記録をして,電磁的記録に記録された情報を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとった者 ② 中小企業金融円滑化法第8条第1項の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者 (イ)法人についての罰則,両罰規定 法人の代表者又は法人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人の業務に関し,中小企業金融円滑化法17条の違反行為をしたときは,その行為者を罰するほか,その法人に対して2億円以下の罰金刑を科する(中小企業金融円滑化法第18条)。 |
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