「ミラーレス一眼」から「一眼」の文字を除くのが正しい進化 - 写真撮影レッスン - 専門家プロファイル

宮本 陽
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閲覧数順 2024年04月19日更新

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「ミラーレス一眼」から「一眼」の文字を除くのが正しい進化

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そうだったの?意外なカメラの知識

そうだったの?意外なカメラの知識:「ミラーレス一眼」から「一眼」の文字を除くのが正しい進化

「ミラーレス一眼レフ」から「一眼レフ」の言葉を取り除き、単に「ミラーレスカメラ」と記述するサイトが増えてきたようです。当たり前のことが当たり前に呼ばれるよう正常化していると言えるのではないでしょうか。


 【従来から「一眼レフ」とはこうした構造のものを呼んでいる】

 「一眼レフ」という呼称は、従来からS.L.R.(Single-Lens Reflex)のことを示し、単一のレンズ(一眼)を使用し反射鏡(レフ)を利用してファインダーから像を確認できる構造を持ったカメラのことを(学術的な分類は別として慣習的に)呼んできました。目視によるファインダー確認の時点で正立像を得るためペンタプリズムを備えたことにより、アタマの部分が大きくなり、且つミラーボックス部分の物理的なスペースが必要とされることになりました。こうしていわゆる多くの方がイメージする「一眼レフ」のスタイルとなったものです。

他方、コンパクトデジカメに見られるような、ミラーを備えずレンズからの光が結像する部分にセンサー(かつてはフィルム)を配置したものもあります。これは上記のような機構がありませんので「一眼レフ」ではありません。単なるコンパクトカメラだとか、過去にはレンジファインダーカメラ、等の呼び名で親しまれてきました。デジタルの時代になってから生まれたものはフィルムの代わりにセンサーを備えていますので、コンパクトデジタルカメラと呼ばれるべきものです。昨今は、このコンパクトデジタルカメラのことを「デジタルカメラ=デジカメ」と呼び、いわゆる「一眼レフ」と区別する流れができたのは記憶に新しいと思います。


【日本語の微妙な言い回しに迷わされていないだろうか?】

他方、近年注目されている「ミラーレス一眼」は、このコンパクトデジタルカメラをベースにしながら、より大きなセンサーを採用したり、レンズが交換できる、等の機能を付加したものとして登場しました。これらは「一眼レフ」に迫る画質や「一眼レフ」のようなレンズ交換ができることを謳うものの、あくまでも「コンパクトデジカメ」の高級・高機能版という存在であり、決して「一眼レフ」ではありません。「一眼レフ」とは、上記のような構造を持ったカメラに対する呼称であり、レンズ交換の可否や画質に言及するものではないのです。

そうであるにも関わらず、より上位規格である「一眼レフ」の呼称を使いたい販売戦略によって生み出されたのが「ミラーレス一眼」というネーミングだと考えられます。

販売側の意識としては、「一眼レフ並の」機能や画質、性能を持っているよ。けれども一眼レフではないよね。それはミラーがないからね...。だからミラーレス一眼と言ってるでしょ...。ということなのでしょう。しかし、ミラーがない時点で上述したように「一眼レフの構造」ではなくなってしまっている訳です。

大変に大きな違和感を感じたのは私だけではなかったようで、当初多くの職業撮影者は「ミラーレス一眼」の呼称に否定的な感覚を持っているようでした。個人的な感覚の表現が適切かどうか不明ですが、まるで「バイクのことを呼ぶのに車輪が2つだけの乗用車」だとか、「ラジオのことを呼ぶのに音だけ聞こえるテレビ」と言うような激しい違和感を隠せません。


【「ミラーレス一眼」から「ミラーレスカメラ」と呼ぶように変わってきつつある】

2012年に入り、さまざまな目的やターゲットに特化した商品化が徐々に店頭に並ぶようになってきています。当初の「一眼レフの名を借りただけの高級、高機能コンパクトデジカメ」ではなくなってきつつあるのは喜ばしいことです。

それに呼応して「ミラーレス一眼」から「一眼」の文字を取り去り、単に「ミラーレスカメラ」と呼ぶような流れも一部で見られるようになりました。海外では日本でいう「ミラーレス一眼」は単に「ミラーレスカメラ」と呼ばれる分類であり、決して一眼レフではないことはメーカー自らが海外向けミラーレスカメラにSLR(一眼レフ)の呼称を使っていないことでも判ります。

技術革新は既存の機能を刷新、塗り替えし、より良い機器(道具)を提供してくれます。それは撮影者にとって歓迎すべきことであり望ましいことあるはずです。ところが、そうした技術をプロダクトに落とし込む黎明期には、技術だけが一人歩きし評価されることがあります。この時点では「古きを叩き新しきを褒め称える」ことにより新技術をよりアピールする。といった不思議な風潮があるようで、ミラーレスカメラもその先兵を務めさせられたのは不幸としか言いようがありません。

現実に、ミラーレスカメラはコンパクトカメラよりも高機能、高画質であることが多く、まさに「一眼レフカメラ」に迫るクオリティを持つものが多いのですから。全ては微妙なネーミングに踊らされたところに問題の原点があるように思います。


【近い将来にはミラーレスカメラのデメリットも解消するであろうことが予想できる】

近々に、実際にブレイクスルーが実現し、ミラーレスカメラのデメリットについても改善される日が来るであろうことが予想されます。原理的に絶対に越えられない電子ビューファインダーのタイムラグについては、光学ファインダーと電子ビューファインダーのハイブリッド型として解決するであろうことは、既に一部のモデルにおいてその兆しが見えています。また操作性や道具としてのレスポンスも改善の方向に向かっているようです。

あとは、販売店や流通、そしてミラーレス登場当初から「もう一眼レフの時代じゃねえよ。一眼レフなんて無用の長物!」と、ミラーレスをもてはやすだけにとどまらず、従来から存在する一眼レフをこき落としたジャーナリズムが良識ある判断をする時期かと感じています。

新技術とその採用機器が内包する種々デメリットが解消され、既存の機器を上回る道具に昇華した時点で、初めてその機器に対する評価と、他の機器との比較評価がなされるべきものでしょう。真摯にカメラに向き合っている人たちを混乱させ誤解を生むような微妙なネーミングも少しづつ変わってくるはずです。これでようやく正常進化の方向に進み始めたのだと思います。


こうした道具(カメラ)を使って仕事をする立場の人間としては、大きさ・重さ、操作感も一つの重要なファクターなのです。分野が違い過ぎますが、文筆を生業にしている人たちにとって、仮に技術革新が進んで手書き入力や音声認識などが実現しキーボードが消えるかもしれないとしても、きっと慣れ親しんだキーボードは必要不可欠だと感じる人たちも居るはずです。音楽家にとっても楽器の仕様が次々に変わり奏法を次々に変えなくてはならないとしたら、世の中どうなるでしょうか。こうした事実・背景を知らずに評論だけに徹する人たちがこれ以上増えないことを望みたいものです。

新たな年は、新たな技術も目白押しではないかと期待が膨らみます。技術立国日本として確実な世界的地位を取り戻して欲しいものです。


(イメージ写真)
説明のため同一画像を処理し、コントラストが高いものとオリジナルとを掲載しています。
センサーサイズが極端に小さいコンパクトデジカメは、パッと見の派手さを出す目的と、センサーや画像処理機能の限界が低いためにハイライト部は飛び、シャドウ部は潰れ、ノイズまみれになってしまうことが多い。酷いのはレンズによる美しいボケ具合とは似て非なる単なるボカしまで画像処理で作ってしまう。こうしたデータをカメラ内で保存前に作り出し厚化粧された結果を見せられているもの。コンパクトデジカメをベースにしたミラーレスカメラに「一眼レフ」の文字を使うのはいかにも不適切であると感じる。


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