- 松永 文夫
- FPコンサルティングオフィス 代表
- 東京都
- ファイナンシャルプランナー
対象:お金と資産の運用
今回は米国の経済情勢について説明します。
米国の最近の動きとしては、9/20~9/21に連邦公開市場委員会(FOMC)があり、景気減速に対する金融緩和策が発表されました。
しかし、その内容が事前予想の範囲内であったことや、連邦準備理事会(FRB)が声明で、「経済見通しには深刻な下振れリスクがある」との非常にネガティブな見方を示したことで、投資家心理のさらなる悪化を招き株価が大きく下落する結果になってしまいました。
その金融政策の内容はと言いますと、ツイストオペによる長期金利の押し下げを狙ったものでした。ツイストオペとは、FRBが市場に供給するマネーの調節で期間の短い国債を売って、期間の長い国債を買うという操作です。これにより市場に出回る長期国債が減るため需給が引き締まって長期金利が低下し、それが民間の融資金利にも波及するであろうという狙いです。
しかし、これでは景気減速を和らげるには力不足との見方か多く、リスク回避の動きが強まってしまったわけです。実際、米国10年物国債利回りは既に2%を下回るという歴史的な水準にあり、実体経済に与える効果は限定的であろうと思われるからです。
そもそも、米国の最も大きな問題は、家計の債務調整が未だ道半ばの状態だということです。住宅ローン残高が住宅の時価を下回る家計が非常に多いために、なかかな消費が伸びず経済が活性化しないという構造的とも言える問題を抱えているのです。
例のサブプライムローンに代表される住宅バブルの後遺症が未だ残っているわけです。その上、肝心の雇用と所得環境が厳しいという状況ですから、この調整はまだまだ時間を要します。最低でも5~6年はかかるとも言われています。
今回の長期金利の押し下げを狙った金融緩和策は、その住宅市場をテコ入れし景気浮揚につなげる狙いがあったのですが、その評価は前述のとおりで、米国の金融政策の手詰まり感は強いと言わざるを得ません。株価の大幅下落を招いたのは、米国の金融政策の限界を市場が見て取ってしまったからにほかなりません。
「今回の株価下落は行き過ぎだ」との声もありますが、株価が上昇する要因がなかなか見つからないのも事実です。
さて、米国の非常に厳しい状況をお話ししてきましたが、この米国よりも大きな問題を抱えているのが欧州です。
次回は欧州について説明します。
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