皆さん、こんにちは。
本コラムの過去3回にわたって、『小規模宅地等の減額』特例の「適用要件」や「適用面積」、その減額の「割合」等、ひと通りの「概略」についてお話してきました。
実際には、不動産の「所有形態」は様々、「使用状況」も様々、家族の生活スタイルも様々ですので、この適用要件にぴったりと合致するモデルケースのような例ばかりではありません。
しかも、平成22年に一部改正されたことにより、この「小規模宅地等の減額」に対するご質問やセミナーのご依頼を受ける機会がより多くなりました。
ですから、次回以降、数回に分けて、平成22年の「改正項目」についてご説明し、実務上でよく問題となるいくつかのケース等についても触れていきたいと思います。
実は、この「小規模宅地等の減額」、突き詰め始めるとキリがないくらい、複雑で、範囲が広いんです。
ですから、「小規模宅地等の減額」の後半戦に入る前に、一旦、小休止。
「小規模宅地等の減額」の適用要件の中にも出てくる、『同一生計』というキーワードについて、少しお話してみたいと思います。
平たく言えば「同じ財布で生活している」ということになるのでしょうが、細かい条件等については一切「相続税法」の中には示されていません。
唯一、その指針となりそうなのが、「所得税法」の中に記載されている、以下のような文章です。
【生計を一にするの意義】
所得税法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするとする。
イ.当該他の親族と日常の起居をしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合。
ロ.これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合。
2)親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
しかし、この「所得税法」の規定は、いわゆるサラリーマンの単身赴任や、勉強のために東京や大阪などの大都市で暮らす学生を想定して出来ている規定ですので、必ずしも相続の世界とは合致していない部分があります。
核家族化の著しい昨今、相続を迎える世代は親も子も別居し、互いに物理的にも金銭的にも独立したまま生活しているケースは少なくありません。
例えば、親は老人ホームに入居、子どもは分譲マンションに住んでいるというご家庭は珍しくはないと思います。
そんな場合、実務上はどのように扱うのでしょうか?
これも明文化された規定がないので、なかなか難しいところなのですが、別居の場合には「生活費の大半をどちらかに依存している」というのが、ひとつの指標になるかと思われます。
判断に迷ったら、資産税専門税理士に相談してみるのも、ひとつの手かも知れません。
次回からは、「小規模宅地等の減額」の平成22年の「改正項目」について話を進めたいと思います。どうぞ、お楽しみに。
このコラムの執筆専門家

- 高原 誠
- (東京都 / 税理士)
- フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。
フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。
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